ペルシア神話③ロスタムの英雄伝説|七つの試練と運命の戦い
はるか昔、ペルシアの大地に、ひとりの偉大な戦士が誕生した。その名はロスタム。彼は比類なき力と勇気を持ち、数々の戦いを乗り越えてペルシアを守る英雄となった。だが、その運命には栄光だけでなく、悲劇も待ち受けていた——。
1. ロスタムの誕生
かつてペルシアに、偉大なる戦士ザールと、美しき王女ルダベの間にひとりの子が生まれた。しかし、その子は母の胎の中であまりにも大きく育ち、ルダベの命すら危ぶまれるほどであった。

「この子は神に選ばれし運命の戦士。どうか母子ともに救われんことを……」
賢者たちは神の導きを仰ぎ、かつてない方法でルダベを助けた。

そうして生まれたロスタムは、生まれながらにして驚異的な力を持ち、幼少の頃から獅子を倒すほどの強さを示した。
やがて、彼は運命の相棒となる愛馬ラクシュを得て、戦士としての道を歩み始めた。
2. 七つの試練(ハフト・ハーン)
ある日、ペルシア王が邪悪な魔王に囚われたとの報せが届いた。
「この国を守れるのは、おぬししかおらぬ!」
ロスタムはただちに立ち上がり、王を救うべく、長く険しい道のりへと旅立った。彼を待ち受けるのは七つの試練(ハフト・ハーン)であった。
第一の試練:獅子との死闘
夜の荒野で、巨大なライオンが彼に襲いかかる。しかし、ロスタムはひるむことなく立ち向かい、愛馬ラクシュと共に獣を倒した。

第二の試練:乾きの試練
燃え盛る砂漠の中で、ロスタムは水を求めてさまよう。しかし、神の導きにより、清らかな泉を見つけ、命を繋いだ。
第三の試練:魔女の誘惑
ロスタムは美しき女に化けた魔女と出会う。だが、その眼に映る影を見て魔女の正体を見破り、一撃で討ち果たした。

第四の試練:巨人の襲撃
突然、地を揺るがすほどの巨人が現れる。ロスタムは剣を抜き、激しい戦いの末に巨人を打ち倒す。
第五の試練:闇に潜む竜
漆黒の闇に潜むドラゴンが、炎を吐いて襲いかかる。ロスタムは愛馬ラクシュの警告を受け、魔法の剣でこれを斬り伏せた。

第六の試練:邪悪な魔法使い
ロスタムは呪術を操る魔法使いと対峙し、その魔術を跳ね返して勝利を収めた。
第七の試練:悪の王デーヴとの決戦
ついにロスタムは邪悪な王デーヴの元へと辿り着いた。血と炎に包まれた戦場で、ロスタムは激闘の末、ついに悪の王を討ち倒し、囚われたペルシア王を救い出した。

3. 悲劇の運命:ソフラーブとの戦い
その後も幾多の戦いを経たロスタムだったが、彼の運命は無情であった。
ある日、ペルシア王国に挑む若き戦士が現れた。その名はソフラーブ。並外れた力を持つ彼は、父を知らぬまま成長し、ペルシアへと攻め入った。
戦場で対峙した二人は、お互いの素性を知らぬまま剣を交えた。激闘の末、ロスタムの刃がソフラーブを貫いた。
「父上……」

瀕死のソフラーブは、ロスタムこそが自らの父であることを知る。しかし、時すでに遅く、ロスタムは最愛の息子を自らの手で失ったのだった。
4. 英雄の最期
ロスタムはその後も数々の戦いに挑み続けたが、最期は裏切りによって迎えることとなる。
異母弟シャガードは、ロスタムを陥れるべく、深い穴に槍を仕掛けた罠を作り出した。何も知らぬロスタムはその穴に落ち、全身を貫かれる。
「この身は滅びようとも……貴様だけは……許さぬ!」
死の間際、ロスタムは弓を取り、最後の力でシャガードを射抜いた。こうして、ペルシア最大の英雄は壮絶な最期を迎えたのだった。
5. 伝説は語り継がれる
ロスタムの生涯は、ただの戦いの連続ではなかった。
- 七つの試練 を乗り越え、真の英雄となる。
- ソフラーブとの戦い では、運命の残酷さに苦しむ。
- 最期の戦い では、裏切りによって倒れながらも、最後まで誇り高く戦い抜く。
彼の伝説は後世に語り継がれ、ペルシアの歴史の中で輝き続ける。今もなお、ロスタムの名は「勇気」と「強さ」の象徴として、人々の心に刻まれているのだ。