ペルシア神話④ペルシア神話の継承者たち|ゾロアスター教の広まりと次世代の王たち
伝説は続く – 次世代の王たちとゾロアスター教の広まり
ペルシアの歴史は、カイ・ホスローの昇天後も続き、新たな王たちが国を統治しました。この時代には、ゾロアスター教の確立、英雄たちの戦い、そして外敵との激しい戦争が繰り広げられ、ペルシアの神話はより壮大なものとなり現代に続きます。
1. ケイ・ローバード(Kay Lohrasp)とゾロアスター教の登場
カイ・ホスローが神の元へ去った後、王位を継いだのはケイ・ローバードであった。彼は敬虔な王だった。武力よりも精神的な統治を重視し、国を安定させることに尽力した。
ゾロアスターの出現
この時代、ペルシアにおいて最も重要な出来事の一つがゾロアスター(ザラスシュトラ)の出現である。
彼は光と善の神であるアフラ・マズダーの啓示を受けた。そして、世界を善と悪の二元論で捉え、人々に新たな信仰を説いた。

ゾロアスター教の主な教義
- 世界は善(アフラ・マズダー)と悪(アーリマン)の戦いの場である。
- 人間は善の行い(善き思考・善き言葉・善き行い)を実践することで、神の秩序を支えることができる。
- 火は神聖なものであり、神の象徴として崇拝される。
ケイ・ローバードはゾロアスターの教えを受け入れ、国家の宗教として広めたことで、ペルシアの文化に大きな影響を与えた。
2. ケイ・ゴシュタースプ(Kay Goshtasp)と英雄イスファンディヤール
ケイ・ローバードの後、王位を継いだのはケイ・ゴシュタースプであった。彼の治世においてもゾロアスター教は広まり続けたが、国内にはこれに反対する勢力も存在した。
イスファンディヤールの活躍

ケイ・ゴシュタースプの息子である**イスファンディヤール(Esfandiyar)**は、ペルシアを守るために数々の試練を乗り越えた英雄であった。彼は不死の加護を受け、七つの試練(ハフト・ハーン)を成し遂げ、ペルシアの守護者として名を馳せた。
しかし、彼の運命は父王の策略によって変わる。ケイ・ゴシュタースプはイスファンディヤールに、伝説の英雄ロスタムを討つよう命じたのである。
ロスタム vs イスファンディヤール
ロスタムとイスファンディヤールは、互いに高潔な戦士であり、戦うことを望まなかった。しかし、イスファンディヤールは父の命令に背くことができず、最終的に戦うことを決意する。

戦いは壮絶を極めた。ロスタムは強靭な力を持つ戦士だったが、不死の加護を受けたイスファンディヤールには刃が通らなかった。しかし、ロスタムは神の導きを受け、特別な矢を用いることでイスファンディヤールを討ち果たす。
この悲劇は、ペルシア神話における最大の悲劇の一つとされ、王族の権力争いがもたらす悲劇の象徴として語り継がれることとなった。
3. 最後のカヤーニ朝の王 – ダーラー(Dara)とアレクサンドロス
イスファンディヤールの死後、カヤーニ朝の王たちは衰退の道をたどった。最後の王となったのは**ダーラー(Dara)**であり、彼の時代には外敵の脅威が迫っていた。
アレクサンドロス大王(イスカンダル)の侵攻

西からギリシャの英雄**アレクサンドロス大王(イスカンダル)**が軍を率いてペルシアに攻め込んできた。ダーラーは奮闘するも、強大なギリシャ軍の前に敗北し、ついにペルシアの王国は終焉を迎えた。
こうして、アレクサンドロスはペルシアを征服した。しかし、彼はペルシア文化に強い影響を受けた。ゾロアスター教を尊重し、多くの文化遺産を守る政策をとった。
こうして、神話の時代は終わり、歴史の時代へと移り変わっていった。
4. 伝説の終焉と新たな時代
如何でしたか?カヤーニ朝の王たちの物語は、ペルシア神話の中で一つの区切りを迎えました。
しかし、その影響は後の時代にも受け継がれました。そして、サーサーン朝ペルシアなどの歴史と交わります。
ここまでをまとめると・・・
- ケイ・ローバードはゾロアスター教を国家宗教とし、ペルシアの精神的基盤を築いた。
- ケイ・ゴシュタースプの治世では、イスファンディヤールの英雄譚が生まれた。
- イスファンディヤールとロスタムの戦い。宿命に翻弄される英雄たちの悲劇を象徴した。
- ダーラーの敗北によって、神話の時代は幕を閉じた。
となります。
こうして、ペルシアの伝説は歴史へと引き継がれ、新たな物語へと繋がってくのです。
ペルシアからイランへの歴史の流れ
- アケメネス朝ペルシア(紀元前550年~紀元前330年)
- キュロス大王がペルシア帝国を築き、ダレイオス1世の時代に最盛期を迎える。
- しかし、アレクサンドロス大王(イスカンダル)の侵攻によって滅亡。
- ヘレニズム時代(セレウコス朝:紀元前312年~紀元前63年)
- ギリシャ文化がペルシアに広まり、ゾロアスター教も影響を受ける。
- パルティア(アルサケス朝:紀元前247年~224年)
- アレクサンドロスの後、イラン系の王朝が再興し、ローマ帝国と対立。
- サーサーン朝ペルシア(224年~651年)
- ゾロアスター教を国教とし、ペルシア文化の黄金時代。
- しかし、7世紀に**イスラム帝国(正統カリフ時代・ウマイヤ朝)**によって滅亡。
- イスラム化とイランの形成(651年~現在)
- イスラム帝国支配下で徐々にイスラム教が広まる。
- その後、セルジューク朝、モンゴル帝国(イルハン朝)、サファヴィー朝(シーア派の確立)などを経て、ペルシア文化が受け継がれる。
- 1935年、レザー・シャーの時代に正式に国名を**「イラン」**と変更。
まとめ
ペルシア神話の王たちが統治した「神話の時代」から、歴史上の「ペルシア帝国」、そして「イラン」へと国家は変遷していきました。しかし、ゾロアスター教やペルシア文化は現在のイランにも影響を与え続けています。