風神雷神とは?雷と風を司る日本の神々の正体と信仰の歴史
【1】風と雷の神──なぜ神として祀られたのか?
風と雷は、古代から人々にとって恐ろしく、同時に恵みをもたらす存在でした。
風が田畑に空気を運び、雷が雨を呼び、稲を育てる――
一方で台風や落雷は命を奪う災害でもあります。
日本人はこの二面性を持つ自然の力を“神”として畏敬し、祀ってきました。
それが「風神」と「雷神」です。
【2】風神とは?──風を操る緑の鬼神
風神は、風を司る神で、一般的には緑色の肌を持ち、風袋(ふうたい)を背負った姿で描かれます。

- 古事記では「志那都比古神(しなつひこのかみ)」という名で登場
- 「科戸の風」とも書き、風の神格化
- 台風を鎮め、五穀豊穣をもたらす存在として信仰されてきた
風神は、もともと神道における風の神ですが、後に仏教や密教と習合し、現在のような鬼神のイメージが定着しました。
【3】雷神とは?──雷を操る赤い鬼神
雷神は、雷を鳴らす神。太鼓を叩いて雷鳴を起こすとされ、赤い肌に角、太鼓を背負った姿が定番です。

- 『古事記』では「火雷神(ほのいかづちのかみ)」として登場
- 地下の黄泉の国に潜んでいた雷神とされる
- 雨を呼び、農作物を育てる恵みの象徴である一方、落雷の恐怖も担う
特に農業神・水神と深い関係があり、雷神信仰は田植えや雨乞いの祭礼とも結びついています。
【4】風神雷神図屏風──宗達が描いた鬼神の姿
風神雷神が今のようなビジュアルで知られるようになったのは、江戸時代の絵師・俵屋宗達の『風神雷神図屏風』によるところが大きいです。
- 風神は右、雷神は左に配置
- 雲の中に浮かび、風袋と太鼓を構える構図
- 鬼神でありながら、どこかユーモラスで美しさもあるデザイン
この図像は、後の尾形光琳や酒井抱一らにも受け継がれ、日本美術の定番モチーフとなりました。
【5】民間信仰と“厄災除け”の神としての風神雷神
風神・雷神は、庶民にとって災害を避けるための守護神としても信仰されてきました。

- 各地の神社で「風神祭」や「雷神社」が建立
- 江戸時代には疫病除けの神(特に雷神)が信仰された
- 家屋の屋根に雷よけとして“雷除けのまじない”を置く風習もあった
また、風神雷神は**仏教の「護法善神」**としても扱われ、寺院の門や仏画に描かれることもあります。
【6】伝説と民話──風神雷神にまつわる日本各地の話
各地には、風神・雷神に関する逸話が残されています。
- 雷神が子どもを連れ去る:雷に打たれた木の下にいた子供が消え、神に祈ると戻ってきたという話。
- 風神を封じる社:ある村で強風が毎年田を荒らすため、風神を祀ると穏やかになったという伝承。
- 雷神の太鼓を盗む:欲張った男が雷神の太鼓を盗もうとし、雷に打たれたという教訓話も。
これらの物語は、自然への畏敬と、神との約束を破ることへの警鐘でもあります。
【7】現代の文化に生きる風神雷神
風神雷神は、今なおさまざまな形で文化に息づいています。

- ゲームやアニメ(例:『NARUTO』『陰陽師』『ペルソナ』など)に登場
- 神社仏閣、屋根の鬼瓦、和菓子のパッケージなどにも
- スポーツや芸能でも「風神雷神コンビ」などとして象徴的に使われる
風と雷という原始的な力を象徴する存在として、現代でも人々の想像力を刺激し続けているのです。
【8】まとめ:風と雷に宿る神性──日本人の自然観
風神と雷神は、単なる恐怖の象徴ではなく、
自然の力と共に生き、調和しようとする日本人の知恵の象徴です。
神 | 象徴するもの | 信仰の目的 |
---|---|---|
風神 | 風、台風、季節の変化 | 五穀豊穣、台風除け |
雷神 | 雷、雨、天の声 | 雨乞い、火難除け |
彼らを通じて、私たちは自然とどう向き合うべきかを、静かに問われているのかもしれません。