癒しと旅の守護者――大天使ラファエルとは?その役割と伝承に迫る【天使シリーズ第3回】
1. ラファエルとは誰か?
ラファエルは、キリスト教やユダヤ教、さらにはイスラム教にも登場する重要な天使のひとりです。その名前はヘブライ語の「רְפָאֵל(Rafa’el)」に由来し、「神は癒す」または「神の癒し」という意味を持ちます。
彼はミカエル、ガブリエルと並ぶ三大天使の一柱とされ、とくに「癒し」と「導き」を司る存在として知られています。
ラファエルは、ミカエルのように戦う姿ではなく、困難な旅路を共に歩き、癒しの力で人々を助けるという温かい役割を担っています。
2. 聖書における登場:トビト記の旅
ラファエルの代表的な登場は、旧約聖書外典『トビト記』にあります。そこでは「アザリヤ」という偽名を使い、青年トビアスの旅に同行する守護天使として描かれています。

物語は、盲目となったトビアスの父トビトを癒すため、トビアスが遠方の親族のもとへ銀貨を受け取りに行く旅に出るところから始まります。ラファエルは旅の途中で出会ったトビアスに名乗り、道中の安全を守りながら同行しました。
道中、トビアスは大きな魚を捕まえます。ラファエルはその内臓を使って、悪霊に取り憑かれていた女性サラを救い、さらに父の目を癒す方法を教えました。この旅を通じて、ラファエルは癒しの力とともに、正しい道へ導く天使としての役割を果たします。
3. ラファエルの象徴と役割
ラファエルにはいくつかの象徴があります。よく見られる姿は、若い男性の姿で、旅の杖を手にし、小さな薬壺や魚を持っていることが多いです。これらはトビアスとの旅、癒し、導きといったラファエルの象徴的なエピソードに基づいています。
彼は、以下のような人々の守護者とされています:
- 病人・医療従事者(医師・薬剤師)
- 旅人・巡礼者
- 精神的な癒しを求める人々
ラファエルは単なる肉体的な治癒だけでなく、心や魂の傷に対しても深い癒しをもたらす存在とされています。
4. 祈りと信仰の対象としてのラファエル

ラファエルはカトリック教会において、10月24日に祝われる聖人でもあります。旅に出る前、病を癒したいとき、あるいは精神的に疲れているときなど、ラファエルに祈りを捧げることで守護と癒しを願う信仰は、今も世界中に根強く残っています。
特に「癒し」の天使として、スピリチュアルやヒーリングの分野でもラファエルは高い人気を誇り、「緑色の光を放つ天使」として視覚化されることもあります。
5. 芸術と文化におけるラファエル
ルネサンス期の宗教画には、ラファエルとトビアスの旅の場面がしばしば描かれました。ラファエルは、透明感のある美しい顔立ちの青年として表現されることが多く、その姿には人間的な温かみと、超越的な優しさが感じられます。
また、現代のファンタジー作品やライトノベルでも、ラファエルは「癒しの使者」や「旅の案内人」として再解釈され、多くの人々に親しまれています。
6. まとめ:癒しと導きの天使、ラファエル
ラファエルは、苦難の中にある人々のそばに寄り添い、癒しと道を示す存在です。ミカエルのような戦士、ガブリエルのような神の使者とは異なり、より人間に近い感情と行動を持って描かれることが多いのが特徴です。
もしあなたが何かに悩み、癒しを求めているのなら、ラファエルにそっと祈りを捧げてみてください。彼はそっとあなたの隣に立ち、道を照らしてくれるかもしれません。