デカメロン10選その2【修道女たちの秘密の夜遊び】|神に仕える乙女たちの夜の連帯

◆『デカメロン』とは?

『デカメロン(Decameron)』は、14世紀のイタリアでジョヴァンニ・ボッカッチョによって書かれた短編集です。
1348年、フィレンツェで猛威をふるった**黒死病(ペスト)を逃れて田園に集まった10人の若者たち(7人の女性と3人の男性)**が、10日間にわたって毎日物語を語り合うという枠組みで、全100話が語られます。

物語の内容は、恋愛、機知、裏切り、欲望、聖職者の偽善、貧富の格差など、まさに人間の本質を照らし出す鏡のよう。
滑稽で笑える話もあれば、胸を打つような純愛もあり、700年前に書かれたとは思えないほど生き生きとした人間ドラマが詰まっています。

その中でも人気のあるお話を10選お届け、今回は2つ目です。

修道女たちの秘密の夜遊び ―― 神に仕える乙女たちの夜の連帯


◆ひとりの修道女と、ひとりの男から始まった

舞台はある地方の女子修道院。そこにはまだ若く、美しい修道女たちが暮らしていた。日中は祈りと作法に勤しみ、沈黙と規律に従って過ごしていたが――

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その静かな壁の内側には、外界への密かな欲望が渦巻いていた。

ある日、修道女のひとりが恋人を修道院にこっそりと連れ込むことに成功する。男は“病人の世話”を装って女子修道院に滞在する許可を得ると、実際には夜になると修道女の部屋を訪れ、密会を重ねた

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しばらくして、他の修道女たちもこの秘密に気づく。

「あの子だけずるいじゃない。私たちだって…」

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こうして男は次々と別の部屋にも呼ばれるようになり、修道女たちは順番に彼と関係を持つようになる。静寂な修道院に、夜な夜な彼が歩く足音だけが響く。


◆ 院長の“まさか”の登場

この事態を知らなかったのは、院長ただひとり。
だが、やがて彼女も事実に気づくと、激怒するかと思いきや――

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「まったく…ならば私の部屋にも来なさい」

そう言って、院長までも男を誘惑する

こうして、修道女全員+院長という前代未聞の「共有男」が誕生し、彼は修道院の中で最も忙しい男となった。


◆ 危機と団結:調査の目が入る

ある日、うわさが外部に漏れ、教会の監督官が修道院に調査に訪れることとなる。

絶体絶命――と思われたが、ここで修道女たちは一致団結して口裏を合わせる

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「彼は本当に病人だったんです」
「献身的な奉仕をしてくれて助かりました」
「夜中? そんなこと、ありませんよ」

彼女たちは完璧に演技し、男を隠し通した。

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監督官はすっかり信じ、何の疑いも抱かずに去っていく。
こうして、彼女たちの“夜の秘密”は、誰にも暴かれることなく守られたのだった。


◆ この物語が語るもの

このエピソードは、ボッカッチョらしい大胆なユーモアと痛烈な風刺に満ちています。

表面上は「破廉恥な話」として笑えるのですが、深層にはこんな問いが潜んでいます。

  • 信仰とは何か?
  • 欲望は罪なのか?
  • 女性たちの連帯としたたかさは、罪か知恵か?

彼女たちは決して“堕落した”わけではなく、むしろ抑圧された環境で自らの欲望に忠実に生きたのです。そして、外の権威に対しては“演技”で対抗した。

この話は、**「支配と嘘」「性と連帯」**という、現代でも通じるテーマを内包しています。

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