日本の幽霊とアイルランドのバンシーの伝承:文化を超えた死の予兆の物語
バンシーは「死を予言する妖精」として恐れられ、彼女の泣き声を聞くと、家族の誰かが亡くなるとされています。
アイルランドでは古くからバンシーの存在が信じられ、その恐怖は「避けられない運命」として強いものがありました。
バンシーの呪いは直接的な攻撃ではなく、「死の到来を知らせる」という形で恐怖を与え、人々の心に深く影響を及ぼしています。
このため、単なる予言ではなく「避けられない運命」という点で凄まじい呪いの一種とされています。
バンシーについてこんな話が伝わっています。
バンシーと村人の家族
昔、アイルランドのとある村に、フィンという若者が住んでいました。
ある夜、フィンが家に帰る途中、川辺で悲しげに泣き叫ぶ声が聞こえてきました。
不安になりながらも、フィンは声のほうを見に行くと、そこには長い白髪の老女がいました。
彼女は真っ白な服をまとい、顔を手で覆いながら涙を流していました。フィンが近づこうとすると、老女は目の端にフィンをとらえ、悲しそうに彼を見つめましたが、すぐに姿を消してしまいました。
フィンは恐怖を感じながらも家に帰り、その晩、家族にその出来事を話しました。
すると、家族の顔が青ざめ、「バンシーだ」とささやき始めました。
村では、バンシーの泣き声を聞くと、近くで誰かが亡くなるという言い伝えがあったのです。
その予言のように、数日後、フィンの祖父が突然亡くなりました。
家族は祖父の死を悼みながらも、バンシーが知らせてくれたことで最後の時を心の準備と共に迎えることができたと信じ、彼女に感謝する気持ちも抱きました。
この話は、バンシーがただ恐ろしい存在というだけでなく、運命を告げる「見守る存在」として捉えられることもあることを示しています。バンシーの存在が、死や別れに対する覚悟や家族愛を浮き彫りにするものとして伝えられている点が、アイルランド民話の魅力のひとつです。
日本にも伝わる死の警告者たち
なにもアイルランドだけではありません。オーバーロードではアインズが《クライ・オブ・ザ・バンシー/嘆きの妖精の絶叫》とかすごいの使ってましたが・・・
日本にも結構凄い伝承があります。
1. 幽霊の「予告」
日本の伝承には、亡くなる直前にその人の幽霊が親しい人の前に現れることがある、という話があります。
これを「生霊」とも呼びますが、本人の魂が死を前にして一時的に現れ、最後の別れを告げるとされています。
例えば、遠くにいる家族や恋人のもとに「姿が見えた」と思ったら、その人がすでに亡くなっていたという話が多く残っています。
これも一種の「死の予告」として、日本版のバンシーのような役割を果たしています。
2. シラサギ
シラサギ(白鷺)は、死者の魂が鳥の形をとって天へ昇る象徴とされることがあります。ある地方の伝承では、家族が亡くなる直前や亡くなった直後に白鷺が家の周りを飛び回ることがあるとされ、これが「死を予告するもの」として見られることがありました。この鳥の姿は、死者の魂が旅立つ様子を示すと同時に、家族への別れのメッセージともされています。
3. 夜鳴き石(よなきいし)
夜鳴き石は特定の場所にある石で、夜になると人の声や泣き声が聞こえるとされるものです。この石の声を聞いた者には不幸が訪れるといわれ、その場所に近づくこと自体が不吉とされてきました。特に、この泣き声が特定の人間に向けられている場合、身近な人に不幸や死が訪れる予兆とされていました。
4. 狐や動物の鳴き声
狐や他の動物が異常な声で鳴くのを聞いたとき、それが不吉の兆しとされることもあります。例えば「狐が夜中に泣くと誰かが亡くなる」という話や、「犬が特定の方向を向いて吠えると家族に不幸が訪れる」という伝承もあります。こうした動物の鳴き声が、バンシーのように死を予感させる予兆として機能することもありました。
日本の予兆としての「死」
これらの存在は、バンシーのように直接死を告げる役割を担うわけではありませんが、死の前触れや異変を伝えるための「警告者」としての役割があります。バンシーのように人の姿を取るものが少ないですが、自然界や動物、幽霊を通じて死が近いことを予告する点で、非常に日本的な「死の知らせ」として描かれています。
死の捉え方ひとつをとっても、この様に文化でわかれますね。
でも大事な思想は似てくるのかもしれません。国は違えど人間ですからね(*‘∀‘)