日本神話5:天照大御神と須佐之男命の物語|天岩戸伝説の始まりWITH柴犬
これは「禊ぎの儀式|イザナギが穢れを祓い新たな神々を生む物語」のつづきです。
黄泉の国から戻ったイザナギは穢れを祓い、3人の神を誕生させました。それが「太陽の女神アマテラス」「月を司るツクヨミ」「海や嵐を司るスサノオ」です。
天岩戸(あまのいわと)の物語
古代日本、天界・高天原(たかまがはら)を統べる太陽の女神アマテラス(天照大御神)は、その光で世界を照らし、秩序と繁栄をもたらしていました。彼女には二人の弟、月を司るツクヨミ(月読命)と、海や嵐を司るスサノオ(須佐之男命)がいました。
しかし、スサノオはその荒々しい性格と振る舞いから、多くの神々に恐れられていました。そして、その振る舞いがついに天界と地上の秩序を揺るがす事態を引き起こします。
スサノオの暴挙
スサノオは母イザナミへの執着から、自分の役割を放棄し、黄泉(よみ)の国に行くことを願うようになります。その心の乱れは、周囲に悪影響を及ぼしました。地上で泣き叫び、山や川を荒らし、その結果作物が育たず人々は困窮します。
「スサノオの振る舞いを止めてくれ!」
多くの神々はアマテラスに助けを求めました。アマテラスは困り果て、スサノオに直接会って話すことを決めます。
姉弟の対決
高天原に昇ったスサノオは、アマテラスにこう告げます。
「姉上、私は悪い神ではない。それを証明するために勝負をさせてほしい。」
アマテラスはその挑戦を受け入れ、二人は「どちらがより神聖な存在を生み出せるか」という試練を行うことにしました。
- アマテラスはスサノオの剣を用いて五柱の男神を生み出しました。
- スサノオはアマテラスの勾玉を使って三柱の女神を生み出しました。
この結果、アマテラスが勝利を収めました。しかし、スサノオは敗北を認めるどころか、勝負に勝ったと主張し、さらに暴挙に出ます。
スサノオの無礼
スサノオの振る舞いはますます荒々しくなりました。彼はアマテラスが大切に育てていた田んぼを荒らし、神殿を壊し、果てには彼女の機織り所に死んだ馬を投げ込むという無礼を働きます。この行為により、機織りをしていた侍女が命を落としました。
アマテラスはこの出来事に深く傷つき、心を閉ざしてしまいます。
天岩戸への隠遁
「私はもう世界を照らすことはできない。」
アマテラスはそう言い残し、天岩戸(あまのいわと)と呼ばれる洞窟に身を隠してしまいました。
その結果、世界は闇に包まれました。太陽が消えたことで作物は枯れ、生き物たちは力を失い、混乱と悲しみが広がります。
神々の策謀
困り果てた神々は集まり、アマテラスを天岩戸から出す方法を議論しました。そして、知恵を持つ神たちは一つの計略を立てます。
- 八百万の神々の集まり
神々は天岩戸の前に集まり、アマテラスを外に出すための準備を整えました。 - アメノウズメの舞
アメノウズメ(天宇受売命)という踊りの神が、天岩戸の前で激しい踊りを始めました。その姿に神々は大声で笑います。 - アメノカガミの仕掛け
天之鏡(アメノカガミ)を岩戸の外に設置し、アマテラスの姿を映すようにしました。
アマテラスの復活
「外はなぜそんなに楽しそうなの?」
岩戸の奥でアマテラスは耳を傾けます。
「新しい神が現れました!」
そう答える神々に促され、アマテラスは岩戸を少しだけ開けます。
その瞬間、鏡に映る自分の光輝く姿を目にします。
「これは……私の光?」
驚きの中、神々が岩戸を完全に開き、アマテラスを引き出しました。こうして太陽の光が再び世界を照らし、秩序と繁栄が戻ったのです。
スサノオの追放
アマテラスを傷つけた責任を問われたスサノオは、天界を追放されました。しかし、この追放が彼の新たな冒険と贖罪の旅の始まりとなります。
物語の象徴
天岩戸の物語は、絶望から希望への転換、生と死、光と闇という普遍的なテーマを描いています。
神々の協力や知恵が秩序を取り戻す鍵となり、日本神話における共同体の重要性をも示しています。
補足
高天原を統治しているのは誰?
高天原(たかまがはら)は、天界にある神々の住む場所で、日本神話では重要な舞台です。この地を統治しているのは、**アマテラス(天照大御神)**です。
アマテラスの統治の背景
- イザナギからの委任:
イザナギが禊(みそぎ)の儀式で三柱の神々(アマテラス、ツクヨミ、スサノオ)を生んだ際、それぞれに役割を与えました。- アマテラスには高天原を統治する役割が与えられました。
- ツクヨミは夜を支配する神。
- スサノオは海と嵐を司る役割を担いました。
- 秩序と調和を守る:
アマテラスは太陽を司る神であり、世界を照らし、秩序を保つ役割を持っています。そのため、高天原の中心的な存在として描かれています。
イザナギはどこへ行ったのか?
イザナギ(伊邪那岐)は、イザナミ(伊邪那美)の死後、大きな役割を果たした後、神話の中で次第に舞台から姿を消します。
イザナギの行方についての神話的な説明
- 黄泉の国からの帰還:
イザナギは黄泉(よみ)の国でイザナミと決別し、地上に戻りました。その後、自らの身体と心を清めるために禊ぎ(みそぎ)を行い、多くの神々を生み出しました。この禊ぎが彼の神話の中での最後の大きな行動です。 - 幽宮(かくりみや)への退隠:
日本神話では、イザナギは禊ぎの後、「幽宮(かくりみや)」と呼ばれる場所に隠居したとされています。これは神聖な静かな場所であり、彼が現世の役割を終えたことを示しています。 - 創造神としての役割の完了:
イザナギは日本列島を生み、多くの神々を生んだ後、創造の役割を終えています。そのため、物語の中で前面に出ることはなくなりますが、神聖な存在として記憶されています。
高天原にイザナギがいない理由
- 次世代への移行: イザナギの物語は、創世の物語として位置づけられており、彼の後はアマテラスやスサノオ、オオクニヌシといった次世代の神々が中心となっていきます。
- 役割の終結: 創造の役割を終えたイザナギは、高天原の政治や統治には関与せず、アマテラスがその責任を引き継ぎました。
高天原を統治しているのはアマテラスであり、イザナギは創造の役割を終えた後、幽宮に退隠しています。イザナギは創造の象徴として重要な存在ですが、物語の中心は次世代の神々に引き継がれていきます。この世代交代が日本神話の魅力の一つであり、神話のダイナミズムを形作っています。