古典攻略|源氏物語『末摘花(すえつむはな)』解説|【受験対策】With柴犬
章の背景
「末摘花」は、源氏物語の中でもユーモラスで独特な雰囲気を持つ章です。桐壺や若紫のようなロマンティックな愛とは異なり、源氏の女性関係の中での失敗や滑稽さが描かれています。この章は、人物描写の深さや光源氏の多面的な性格を理解する上で重要です。
簡単なあらすじ
光源氏は父の帝の遺言で、東宮の妃候補の一人である末摘花の存在を知ります。彼女の純粋さに惹かれ、手紙を交わした後、源氏は彼女の住む荒れ果てた屋敷を訪れます。しかし、実際に会ってみると、彼女の容姿や暮らしぶりに驚き、次第に興味を失っていきます。愛することはできなかったけれど、見捨てることもできず、衣食住を提供しました。
つまり、手紙で知った彼女と現実の彼女のギャップに引いてしまったという話しです。
受験頻出ポイント
1 源氏の興味と失望
手紙で期待を膨らませた源氏が、末摘花に会った後でがっかりする場面。
原文: 「わが御前(おまえ)に参りたまふ人びとなども、『いとすべなし』とて、みな帰り参りぬ。」
現代語訳: 「源氏が訪れると、屋敷にいた人々はどうしようもないと考えて次々に帰ってしまった。」
ポイント:屋敷の荒れ果てた様子が詳細に描かれ、末摘花の生活状況がわかる場面。
2 末摘花のユニークさ
容姿や性格に独特の個性がある末摘花。
鼻が赤いことが「末摘花(紅花)」と結びついている。
原文: 「いとわりなう赤き鼻のかたち、いとまばゆし。」
現代語訳: 「とても奇妙に赤い鼻の形が、まぶしいほど目立っている。」
ポイント:末摘花の容姿がユーモラスに描写され、物語全体の軽妙な雰囲気を作り出している。
3 源氏の気持ちの変化
初めは純粋さに惹かれるが、次第に興味を失い、距離を置く。
それでも、完全に彼女を見捨てることはなく、衣食住を支援する場面。
原文: 「心ざしあるべきことならねど、またあぢきなく、え捨てはてたまはず。」
現代語訳: 「真剣に愛するわけではないが、全く無関心でもなく、捨てきることもできなかった。」
4 人物描写の対比
華やかで洗練された女性たち(紫の上や葵の上)との対比。
末摘花の純粋さと内面的な美しさが評価されるが、源氏にとっては物足りない。
試験対策に役立つポイント
- 末摘花の象徴性
- 赤い鼻は末摘花の純粋で素朴な性格を象徴。
- また、物語全体で「理想」と「現実」のギャップを浮き彫りにする役割。
- 源氏の人間性
- 理想と現実の間で揺れる光源氏の姿。
- 人物描写の深さが問われる可能性が高い。
- 覚えるべき古典単語
- いと:とても、たいそう
- あぢきなし:つまらない、不甲斐ない
- すべなし:どうしようもない
- わりなし:道理に合わない、無理だ
例題:読解問題
次の文章を読み、問に答えなさい。
原文: 「心ざしあるべきことならねど、またあぢきなく、え捨てはてたまはず。」
問1:この文章で「え捨てはてたまはず」が示す光源氏の感情を簡潔に答えなさい。
回答:「全く無関心ではないが、真剣に愛する気持ちがない複雑な感情」を表している。
問2:「心ざしあるべきことならねど」の部分に含まれる助動詞の意味と用法を説明しなさい。
回答の:「べき」は助動詞で、推量・当然の意味を表す。「ならねど」は打消の助動詞「ず」の已然形+逆接の接続助詞「ど」。
次の文章を参考に、末摘花の人物像を現代語でまとめなさい。
原文: 「いとわりなう赤き鼻のかたち、いとまばゆし。」
回答:「純粋で素朴だが、外見的には奇妙な特徴を持つ女性。」
まとめ
「末摘花」は、源氏物語の中でもユニークなキャラクターと物語展開が楽しめる章です。源氏の女性観や理想と現実のギャップがよく描かれており、受験でも問われることが多いポイントを押さえておきましょう。