ペルシア神話とは?壮大な叙事詩『シャー・ナーメ』と英雄たちの物語
ペルシア神話は、古代イランに伝わる壮大な物語の数々を指し、特に**叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』**にその神話や英雄譚が記録されています。
この神話体系は、ゾロアスター教の影響を色濃く受けており、善と悪の戦い、偉大な英雄たちの冒険、神々と魔物の争いが壮麗に描かれています。
1. ペルシア神話の世界観
ペルシア神話の中心には、宇宙の創造と善と悪の永遠の戦いがあります。特に、ゾロアスター教の教えに基づく「光と闇の二元論」が重要な概念とされます。
善の勢力

- アフラ・マズダー(Ahura Mazda)
- 最高神であり、世界の創造者。光と知恵を司る。
- アムシャ・スプンタ(Amesha Spenta)
- アフラ・マズダーを補佐する聖なる存在たち。
- ヤザタ(Yazata)
- 崇拝される神々の総称で、ミスラ(Mithra)やアナーヒター(Anahita)などが含まれる。
悪の勢力

- アフリマン(Angra Mainyu / Ahriman)
- 混沌と破壊の化身で、アフラ・マズダーの敵対者。日本ではアーリマンという名前で知られていますね。
- デーウ(Daeva)
- 邪悪な悪魔たちの総称。
2. 主要な神話と英雄たち
ペルシア神話には数多くの英雄が登場します。彼らの活躍は『シャー・ナーメ』に詳しく記録されています。
① フェリドゥーン(Fereydun)

- 暴君ザッハークを討ち、イランを解放した英雄王。
② ザッハーク(Zahhak)
- 肩から生えた二匹の蛇が人間の脳を食べるという呪いを受けた暴君。
③ ロスタム(Rostam)
- ペルシア神話最大の英雄であり、数々の試練を乗り越えた戦士。
④ シーヤーヴァシュ(Siavash)
- 濡れ衣を着せられた悲劇の王子で、後のカイ・ホスローの父。
⑤ カイ・ホスロー(Kai Khosrow)
- 偉大な王として知られ、最後は神々のもとへ昇天する。
3. 代表的な神話
① 創世神話
- アフラ・マズダーが世界を創るが、アフリマンが邪悪な力を送り込む。
② ザッハークとフェリドゥーン
- 暴君ザッハークが人々を虐げるが、英雄フェリドゥーンがこれを討つ。
③ ロスタムの七つの試練(Haft Khan)
- ロスタムが魔物たちを倒し、イランを救う。
④ シーヤーヴァシュの試練
- 義母の陰謀により試され、潔白を証明するため炎をくぐる。
⑤ カイ・ホスローの昇天
- 最後は神々のもとへ去り、伝説となる。
4. ペルシア神話の影響
ペルシア神話は、後のイスラム文化やインド・ヨーロッパ神話に影響を与えました。特に、ゾロアスター教の二元論はキリスト教やイスラム教にも影響を及ぼしたとされています。

- ゾロアスター教 → キリスト教の「神 vs サタン」
- ロスタム → インド神話の英雄(ラーマ、アルジュナ)
- フェリドゥーン → ヨーロッパの伝説の王たち(アーサー王など)
5. まとめ
ペルシア神話は「善と悪の戦い」が中心となり、英雄たちの物語が壮大に描かれています。特に『シャー・ナーメ』は、イラン文化の誇る叙事詩であり、現代においてもその価値が再評価されています。