あれ?白雪姫は可愛いだけで何もしてなくない!?受動的な主人公像を考察する童話の深読み解説
前回の白雪姫の記事に「白雪姫ってなにもしてなくない?可愛いだけで。」というお声をいただいたので・・・
可愛いは正義の体現か!?の視点から、原作の白雪姫を考察します。
白雪姫って、何もしてなくない?―受動的ヒロインとしての白雪姫を考える
グリム童話の代表作『白雪姫』。 美しい少女が継母の嫉妬により命を狙われるも、七人の小人や王子に助けられ、最後には結婚して幸せになる――という有名なおとぎ話です。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみると、こんな疑問が浮かびませんか?
「白雪姫って……何か自分で行動したっけ?」
そう、物語を読み返してみると、白雪姫はあまり能動的な行動をしていないように見えます。
◆ 白雪姫の行動、整理してみよう
出来事 | 白雪姫の行動 |
---|---|
継母に命を狙われる | 森に逃げる(狩人の手助け) |
小人たちと暮らす | 家事を引き受ける(受け入れられるため) |
三度の毒殺計画 | すべてに引っかかってしまう |
毒リンゴで倒れる | 眠ったまま救助を待つ |
王子が現れる | 目を覚まし、結婚する(王子の主導) |
どうでしょうか? 白雪姫の運命は、ほとんどが他者の行動によって変わっているように見えます。

単純にまとめると
- 命を狙われるけど、殺しに来た狩人は、可愛い泣き落とし殺しをあきらめて逃げるように助言!
- 逃げた先で見つけた家に侵入。家主の小人が帰ってきても可愛いから許される!
- 気をつけろと言われていたにもかかわらず、毒リンゴ攻撃で倒れるも可愛すぎて埋葬されず謎のクリスタルの棺に安置。
- たまたまやってきたイケメン王子を可愛く棺に横たわる(生きてる)姿だけで落とす!
- 起きてもなお可愛いが故に王子を完全に骨抜きに成功!決して意図せず!そして王子の権力とチカラに守られて王女となる。
- 命を狙った継母は王子たちに処刑される。
・・・なにもしていない。ひたすら被害者!でも生き残る!これはすごい事ですよ。可愛いは正義・・・!!
◆ なぜ、それでも主人公なのか?
実は、白雪姫は「受動的なヒロイン」の典型とも言われています。 19世紀当時の価値観では、女性に求められる理想像は「従順」「純粋」「美しさ」などでした。 白雪姫はまさにその体現。

つまり、「何もしない」「無垢である」ことこそが、ヒロインの美徳だったのです。
また、白雪姫の美しさは周囲に影響を与えるほどで、 それゆえに継母は嫉妬し、狩人は助け、小人はかばい、王子は恋に落ちる。 「美」は彼女の“力”でもあったのです。
◆ 現代的な視点で見ると…?
近年では、白雪姫のような”受動的ヒロイン像”に批判の目も向けられています。 「自分で選び、戦うヒロイン」や「困難に立ち向かう女性キャラクター」が支持される時代です。

ディズニーや現代のリメイク作品では、白雪姫が剣を持ったり、森の仲間たちを守ったりと、 より能動的な存在として描かれるようになっています。
◆ じゃあ、白雪姫はダメな物語?
いいえ。むしろ大切なのは、
「白雪姫が何をしたか」ではなく、「なぜ“何もしないこと”が称賛されたのか」
という視点で読み解くことです。
白雪姫は時代の鏡。 当時の社会が女性に求めた理想像が、童話というかたちで表現されたものなのです。
そして今、私たちは「彼女がもし、自分で運命を切り拓いていたら?」という視点で、 新しい物語を創っていくことができるのです。
◆ おわりに
白雪姫はたしかに”何もしない”ヒロインかもしれません。 けれど、それは無価値ということではなく、 その背後にある時代性や社会観を知る手がかりになります。

昔話を読み解くことは、過去と今をつなぐ小さな冒険でもあります。 あなたなら、白雪姫の物語をどんなふうに語り直しますか?