桜にまつわる伝承と昔話5選|日本・韓国・中国の花の神秘
春の象徴として愛される「桜」は、ただ美しいだけでなく、古くから多くの伝承や昔話の中に登場してきました。
この記事では、日本国内はもちろん、韓国や中国にも伝わる桜にまつわる物語を5つご紹介します。いずれも実在の伝承や記録に基づくものです。
1. 【日本・奈良】桜の精の伝説(吉野山)
奈良県吉野山は桜の名所として知られていますが、そこには桜の精にまつわる不思議な伝説があります。

ある年、桜が咲かずに人々が落胆していると、一人の旅の女性が現れ、桜の木の下で優雅な舞を披露します。すると、不思議なことに桜が一斉に満開となり、その女性の姿はふっと消えたのです。「あれは桜の精だったのだ」と人々は語り継ぎました。
出典:『日本の伝説・民話事典』(みずうみ書房)
2. 【日本】花咲か爺の地域バリエーション(信州地方)

全国に知られる昔話『花咲か爺』。実は地域によってバリエーションがあり、信州地方では「桜の木限定で咲かせる」設定が存在します。老人がまいた灰によって、枯れた桜が一斉に花開く場面は、まさに再生や希望の象徴として語られてきました。
出典:柳田國男『日本昔話集』、地方の民話記録より
3. 【日本・岐阜】淡墨桜の伝説と再生の物語(本巣市)

岐阜県本巣市の「淡墨桜(うすずみざくら)」は、継体天皇が植えたとされる樹齢1500年以上の名木です。終戦直後、桜は枯れかけましたが、地域の人々が「国の再生の象徴」として必死に守り抜きました。この桜は、咲き始めは淡いピンク、満開時は白、散り際に墨色になるという、まさに人生を象徴するような花です。
出典:岐阜県本巣市教育委員会『淡墨桜の由来と保護活動』
4. 【韓国・済州島】王桜と姫の精霊伝説

済州島に原生する王桜(ワンボッナム)。この桜には、美しい姫の霊が桜となって春に人々へ幸せを運ぶという伝説があります。この桜は韓国で誇り高き在来種とされ、花の下で語られる物語には民族的な感情が深く結びついています。
出典:『韓国民話集(済州島編)』、韓国文化財庁資料
5. 【中国】桜花仙女(桜の花の仙女)の伝説

中国では桜というより「花神」や「花の仙女」として語られます。「桜花仙子」は春の訪れとともに天界から舞い降り、花を咲かせると信じられていました。これは志怪小説にも通じる自然精霊信仰の一形態で、花を尊ぶ文化が色濃く表れています。
出典:中国国家図書館編『中国民間故事集』、復旦大学出版『花神崇拝研究』
まとめ:桜の花に宿る物語
桜は単なる春の花ではなく、精霊・死者・再生といったテーマと深く結びついた存在です。こうした伝承や昔話を知ることで、花見の風景もまた一層味わい深くなるでしょう。