アマビエとは何者か?江戸時代の予言獣と現代復活の謎
「アマビエ」という妖怪をご存じでしょうか?
2020年のコロナ禍をきっかけにSNSで大きな話題となり、多くの人がその姿を描いて疫病退散を願いました。しかし、実はこの妖怪――本当に江戸時代に記録された、れっきとした歴史資料の中に登場する存在なのです。
この記事では、創作ではない実在の妖怪「アマビエ」について、信頼できる史料や民俗学の視点からその正体に迫ります。
1. アマビエの伝承と姿
アマビエは、**弘化3年(1846年)**の春、肥後国(現在の熊本県)の海に現れたとされます。
瓦版に記された姿は以下の通り:
- 髪の長い人のような顔
- 魚のような鱗に覆われた身体
- 鳥のようなくちばし
- 足のようにも尾のようにも見える三本の突起

そのアマビエは、海から現れてこう語ったとされています。
「これより六年間は諸国で豊作が続くが、同時に疫病も流行する。
私の姿を写して人々に見せよ。そうすれば病を退けることができる」
この言葉とともに、瓦版にはアマビエの姿が絵入りで印刷され、人々に配られました。
2. 出典資料:瓦版『肥後国海中の怪』
アマビエの最古の記録とされるのが、京都大学附属図書館に現存する瓦版
**『肥後国海中の怪』**です。
- 制作時期:1846年(弘化3年)
- 発行形態:木版刷りの瓦版
- 内容:肥後の海に現れた不思議な存在の予言とその姿絵
史料リンク(京都大学)
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000210
アマビエはこの一枚の瓦版にしか登場しないため、非常に貴重な資料とされています。
3. アマビコとの関係性と民間信仰
アマビエに似た存在に、「アマビコ(アマビコ)」と呼ばれる妖怪がいます。こちらは各地に複数の記録が残されており、**「未来を予言し、疫病除けとして姿を描かせる」**という点でアマビエと共通しています。
民俗学者・柳田國男はこのような存在を**「予言獣(よげんじゅう)」**と分類し、以下のような社会的機能を持っていたと考察しています。
- 社会不安や災厄に対する民間の心の拠り所
- 宗教や医療の代替としての信仰的実践
- 庶民の情報流通手段(瓦版)との結びつき
アマビエは、この「予言獣」の系譜に位置づけられる存在といえます。
4. 令和に蘇るアマビエ
2020年、新型コロナウイルスの流行により、アマビエは突如として現代に蘇りました。

主な広がり:
- 厚生労働省の広報素材に採用(啓発ポスター)
- 神社仏閣でのアマビエお守り・絵馬の登場
- SNS上での「アマビエチャレンジ」
→ 誰もが自由にアマビエの絵を描いて投稿する運動
これは、かつて瓦版に描いて人々に配られた行為が、**インターネットという現代の「瓦版」**を通じて再現されたとも言えるでしょう。
5. アマビエは妖怪か?神か?
アマビエは「妖怪」と分類されがちですが、その性質は神格に近い存在とする見方もあります。
- 海から現れる=海神や龍神信仰との関連性
- 予言・病気除け=神託的な力を持つ
つまりアマビエは、単なる“怖い存在”ではなく、人々を守る善なる力の象徴として伝えられてきたのです。
まとめ:アマビエは時代を越えて生きる希望の象徴
アマビエは、江戸時代の人々が疫病や自然災害と向き合い、見えない不安に祈りと創造力で立ち向かった証ともいえる存在です。
そして現代でも、同じように不安な時代に、アマビエを描き、共有することで人と人とがつながる。
それはまさに、「妖怪」が時代を超えて生きる文化的な力の証明ではないでしょうか。
参考資料
- 京都大学附属図書館所蔵 『肥後国海中の怪』
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000210 - 柳田國男『妖怪談義』岩波文庫
- 小松和彦『妖怪文化入門』
- 湯本豪一『図説 日本の妖怪』河出書房新社
クロとハルの怪異調査ファイル:アマビエ編
―場所:市立図書館 地方民俗資料コーナー―
(静かにページをめくる音)

ねぇクロ、これ見て!このページ、なんか変な魚…?人間…?鳥?……あ、これがアマビエ?
……そう。江戸時代、肥後の海から現れたって伝えがある。疫病を予言して、自分の絵を人々に見せろって。
えっ、絵を見せるだけで病気を防げるの?ちょっとメルヘンすぎない?
でも実際に、瓦版に描かれて広まった記録が残ってる。これ――『肥後国海中の怪』。
へぇ……ってか、アマビエ、なんか……ちょっとかわいくない?このつぶらな目!
見た目で言うなら“予言獣”の中ではかなりポップだな。
“予言獣”? 他にもいるの?
アマビコ、ジバコ、クダン……未来を告げて災厄を知らせる。民間信仰と情報拡散の原型だ。
おぉ……クロ、やっぱ詳しい。もしかしてアマビエの絵、描いてみたら効果あるかな?
……試す価値はある。江戸時代と同じように、“誰かの安心”にはなるかもしれない。
よーし、じゃあ描くよ!現代版・超かわいいアマビエちゃん!SNSで拡散しようっと!

……そうやって文化は続くんだな。