世界の炎の神々と精霊たち|ケルト・アステカ・マヤ・ゾロアスター教の火の神話を紹介
炎は、破壊と再生、知恵と浄化という相反する力を持つ神聖な存在として、古代から多くの文明で信仰されてきました。本記事では、日本や西洋以外の地域に伝わる「炎」にまつわる神々や精霊を、創作なし・実際の伝承に基づいてご紹介します。
※創作活動のネタにもどうぞ!
ブリジット(Brigid)|ケルト神話
- 属性:炎、詩、鍛冶、癒し
- 地域:アイルランド(ケルト文化圏)
- 関連する伝承:トゥアハ・デ・ダナーンの一員

アイルランド神話に登場する女神ブリジットは、火を司るとともに詩や鍛冶、癒しの力も持つ多面的な女神です。彼女は鍛冶師や詩人の守護者とされ、その炎は創造の象徴とされました。
エピソード:
キリスト教がアイルランドに広まった後も、ブリジットは「聖ブリジット」として信仰され続けました。彼女を祀る修道院では「ブリジットの聖なる炎」が絶えず燃やされ、その火が町を守っていたといいます。
シウテクトリ(Xiuhtecuhtli)|アステカ神話
- 属性:火、時間、宇宙の秩序
- 地域:メソアメリカ(アステカ文明)
- 象徴:トルコ石と火柱、老人の姿

シウテクトリは、アステカ神話の火の神にして宇宙の秩序を司る存在。名前の「シウ」は、火やトルコ石(青い炎の象徴)に由来します。祭壇の火は彼の象徴であり、国家的儀式の中心にありました。
エピソード:
52年ごとに行われた「新たな火の祭り(Xiuhmolpilli)」では、いったんすべての火を消し、シウテクトリに捧げる新しい火を点火。この儀式を行わなければ世界が終わると信じられていました。
アータル(Atar)|ゾロアスター教
- 属性:神聖な火、清浄の象徴
- 地域:古代ペルシャ(現イラン)
- 出典:アヴェスター(ゾロアスター教聖典)

ゾロアスター教において火は「善なる真理の象徴」とされ、「アータル」として人格化された精霊でもあります。火は単なる物質ではなく、霊的な存在として祈りの対象となってきました。
エピソード:
ゾロアスター教では、アータルが宿る「アタシュ・ベラーム(勝利の火)」が特別に守られています。信徒はこの火の前で祈りを捧げ、汚れを浄化し、アフラ・マズダーとの交信を行いました。
イツァム・ナー(Itzamna)|マヤ神話
- 属性:創造、火、知恵
- 地域:マヤ文明(ユカタン半島)
- 姿:双頭のイグアナ、老神

イツァム・ナーは、マヤ神話の創造神であり、火の知恵を持つ存在。天と地を創り、人類に火や暦、医療の知識を授けた神とされています。
エピソード:
王族や祭司たちは、神聖な火を焚いてイツァム・ナーと交信しました。火の儀式では、煙を通して神の意志を読み取るとされ、火は天界と現世をつなぐ媒体だったのです。
終わりに:火の神々が伝えるもの
世界各地で語られてきた「炎の神々・精霊たち」は、単なる自然の象徴ではなく、人間の営みに深く関わる存在でした。火を創る、守る、祈るという行為は、文化を支える大切な儀式であり、神聖な行為だったのです。