アーサー王伝説|最終章 モードレッドの反乱とアーサー王の死―王国の最期と理想の終焉ー少年よ神話になれ!
護るべきものを失った王
かつて理想の王国と呼ばれたキャメロット。
その栄光は、王妃と最良の騎士を失ったことで静かに陰り始めていた。
王アーサーは、遠征先から城へ戻った。
だが、そこにかつての円卓の喧騒はなかった。

そして、王の留守を突いて──
モードレッドが玉座を奪ったのである。
モードレッドの謀略
王の甥にして血を引く者、モードレッドは、王の不在を「戦で命を落とした」と偽り、元王妃グィネヴィアを妻に迎えようと企てた。
そこでモードレットは修道院に使いを送り、グィネヴィアに王が死んだと伝えた。
その知らせを聞き、グィネヴィアは王宮に走った。
だが、そこには王はなく、モードレッドがグィネヴィアに求婚をせまってきたのだ。

グィネヴィアは求婚を拒んだ。
そして、キャメロットの城塔に逃れ、ただ祈りを捧げ続ける。
その姿に、誰よりも誇り高き王家の魂が宿っていた。
王、剣を取る
アーサーは激怒しながらも、冷静だった。
モードレッドはもはや一介の裏切者ではない。
**王国を蝕む“内なる敵”**である。

王は最後の軍を召集し、モードレッドの軍が待ち受けるドーバーへ向かった。
その道中、かつての仲間たちはすでに去り、
今の王の傍らには信じる者も、守る者もほとんど残っていなかった。
ガウェインの死と和解の手紙
激戦のなか、ガウェイン卿は重傷を負い、その最期に、ランスロットへ手紙を書く。

「来たれ、ランスロットよ。
お前の剣がなければ、王国は守れぬ。」
だが──
ランスロットが到着する前に、物語は最終局面を迎える。
運命の戦い
カムランの戦場。
アーサー王とモードレッドが、ついに対峙する。
両軍は疲弊していた。
血を流し、仲間を失い、それでも剣を握り続けていた。
そして──
王はモードレッドに剣を突き立て、
モードレッドもまた、王の脇腹を貫いた。

ふたりはともに倒れ、
その姿は、未来なき王国の象徴のようでもあった。
アーサー、アヴァロンへ
アーサーは瀕死のまま、忠臣ベディヴィアに命じる。
「聖剣エクスカリバーを、湖へ返せ。」

剣を湖へ投げると、湖の乙女が現れ、剣を水底へと導いた。
その後、王の亡骸は黒い船に乗せられ、
三人の女たち──モーガン・ル・フェイを含む神秘の姉妹が、その身をアヴァロンへと運ぶ。

誰もその行く末を知らない。
だが、こう語り継がれている。
“Here lies Arthur, the once and future king.”
「ここに眠るはアーサー、かつての、そして未来の王」
「アーサー王は死したのではない。祖国が真に乱れしとき、再び目覚めるのだ。
終わりに──理想は死なず
キャメロットは滅び、円卓は砕け、騎士たちは散っていった。
けれどその物語は、人の記憶の中で生き続けた。

アーサーの死は、ひとつの終わりではなく──
**「正義と理想の記憶が人の胸に残る限り、彼は生きている」**という証なのだ。
はい!これでアーサー王の伝説はひとまず幕を閉じます。エピローグはまたの機会に。かなりシンプルにまとめたので、物足りないと思います。この記事の最下部におすすめの書籍をご紹介しました。是非手に取ってみてくださいね。では、最後の考察です。
この「三人の女性」とは誰か?
主役はモーガン・ル・フェイ(Morgan le Fay)
- アーサー王の異母姉、あるいは魔女
- 時に敵対者として描かれるが、最後は“癒やし手”として登場
- 死に瀕したアーサーをアヴァロンへ導く女神的存在
残りの2人(諸説あり)
文献により異なりますが、マロリー版ではこう記されています:
「三人の貴婦人がアーサー王の亡骸を黒い船に運んだ。そのうちの一人はモーガン・ル・フェイ、他はノーシアン王の后と、湖の乙女ナイニーヴ(Nimue)であった。」
一般的な構成
名前 | 役割 | 象徴 |
---|---|---|
モーガン・ル・フェイ | 魔術師、癒やし手 | 死と再生の導き手 |
ナイニーヴ(湖の乙女) | エクスカリバーの持ち主 | 神秘・女性性・水 |
第三の貴婦人(名なしorノーシアン王の妃など) | 沈黙の看取り手 | 儀式性、神聖な見送り |
アヴァロンとは何か?
伝説上の「最後の王国」
- アーサーが死から癒されるために運ばれた神秘の島
- 通常、イングランド西方の霧に包まれた彼方にあるとされる
- 「リンゴの島」とも呼ばれる(“Avalon”=「リンゴの果樹園」の意)
なぜアーサーはアヴァロンへ行くのか?
それは「終わり」であり「再生」の始まり
- アーサーは完全に死んだわけではない
- アヴァロンで癒やされ、いつかブリテンが真に危機に陥った時に戻ってくる
- つまり、アーサー=不死の理想王の象徴
物語のテーマ性
この船出のシーンは、中世キリスト教とケルト神話が重なり合った神秘的表現です。
観点 | 象徴 |
---|---|
黒い船 | 冥界への旅・儀式の終わり |
三人の女性 | 命・死・再生を司る「三相の女神」的モチーフ |
アヴァロン | 天国とも、異世界とも、来世の希望とも解釈される |
結論:このシーンの本質
アーサー王が人間を超え、伝説の存在になる瞬間。
- 王妃とランスロットの章が「人間の感情」を描いたなら、
- この最終シーンは、「神話と永遠」の領域へと物語を導いています。
いろんな解釈がなされる伝説、アーサー王伝説。是非もっと堪能してみてくださいね。語り手や時代背景で若干変化がありますが、そこも古典文学の面白いところですね。
アーサー王に興味がある方におすすめ!
主人公は、アーサー王伝説でおなじみの偉大な魔法使いマーリン……ではなく、その愛犬のハナキキ。こっそり魔法を習い、魔法の石の力で人間の言葉も話せます。ある日、マーリンが謎の集団にさらわれてしまい、ハナキキは愛する家族を救うため、追跡の旅へ! はたしてマーリンを助け出すことができるのか? そして伝説の剣、エクスカリバーをぬくのはいったい……?!
表紙からワクワクとほっこりが止まらない!!!!!!!!
ちょっぴりユーモラスな視点で描かれるマーリンとその犬の物語。 エクスカリバーをめぐる新しい冒険譚『魔法使いマーリンの犬』もぜひどうぞ。