モロクとは？古代中東の恐るべき子供の犠牲神とその象徴的意味

モロク（Moloch／Molech／Molek）は、古代中東で信仰されていた恐るべき神の一柱です。特に「子供を火で焼いて捧げる」という残酷な儀式で知られ、聖書でも繰り返しその邪悪さが非難されています。現代では邪神ともいえる扱いのようです。

モロクという名前は、主にヘブライ語で「モレク（Molek）」と表記されることもあります。古代カナン人、アモン人、フェニキア人などの宗教の中にその名が見られ、カルタゴなどの地中海世界でも信仰されていたと考えられています。

モロク信仰の最大の特徴は、「子供を生贄として火にくべる」という極めて過激で恐ろしい儀式です。いわゆる生贄文化ですね。巨大な青銅の像が神殿に設置され、その手のひらや腹部に火を灯し、そこに子を置いて焼いたと伝えられています。

これは文字通りの「火の試練」であり、儀式の参加者たちはその犠牲を神への忠誠や豊穣への願いとして捧げていたとされます。

モロクに関する記述は旧約聖書の『レビ記』『列王記』『エレミヤ書』などに多数登場します。

たとえば『レビ記 18:21』には次のように書かれています。

「あなたは決して、あなたの子をモロクにささげて火の中を通らせてはならない。」

このように、ユダヤ教の律法ではモロク信仰は「忌むべきもの」として完全に否定されており、その影響が長く続きました。

子供を生贄に火にくべるのですから、否定されて当然といえば当然です。ですが、それを良しとし、集団を形成できていたのも事実です。日本でも同じような生贄文化は存在していましたが、現代では許されない行為という認識になっていますよね。

時代が進むにつれて、モロクは単なる異教の神ではなく、人間の犠牲を強いる非人間的な権力や制度の象徴として用いられるようになります。

詩人アレン・ギンズバーグの『Howl』では、アメリカ社会の非人間性を「モロク」に例え、現代社会の冷酷さを暴露しました。

また、映画『メトロポリス』では巨大な機械が「モロク」と名付けられ、労働者を飲み込む存在として描かれています。

モロクはゲームや映画の中でもしばしば登場します。ダークファンタジーの世界では、彼はしばしば「悪魔」や「地獄の王」として再解釈されます。

モロクは古代の神話における恐怖の象徴であり、現代においてもなお、**「未来を犠牲にすることで得られる繁栄」**という概念を警告する存在です。

歴史的にも思想的にも重要なテーマを孕むこの神を、単なる神話として片付けず、人間の本質を見つめる一つの鏡として捉えることができるかもしれません。

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