愛媛・若宮神社の河童伝説|鯛を届けた河童と“狛河童”の神社とは?
河童といえば、川に棲む妖怪として全国各地に恐れられてきた存在。
しかし、ここ愛媛県西予市明浜町の若宮神社(わかみやじんじゃ)には、そんな河童にまつわるちょっと不思議で心温まる伝説が残されています。
若宮神社とは?歴史と由緒
若宮神社は、かつてこの地にあった高山城の城主・**宇都宮修理太夫正綱(うつのみやしゅりのたゆうまさつな)**を祀った神社です。
地元の守り神として崇敬されており、今でも地域の人々に親しまれています。

そんな歴史ある神社に、なぜ“河童”の伝説が伝わっているのでしょうか?
河童と若宮公の出会い
ある日、若宮公が川辺を歩いていると、いたずら好きな河童が悪さを仕掛けてきたといいます。
しかし、若宮公は怒ることなく河童を許しました。
このことに感動した河童は――
「殿にお礼がしたい」と、毎朝、捕れた鯛を一匹ずつ若宮公の屋敷前に届けるようになったのです。

この行為は長く続き、いつしか村人たちは、
「河童は恩を忘れぬ者だ」
と、尊敬の念を抱くようになったといいます。
狛犬ではなく、狛河童が鎮座する神社
この伝説を今に伝えるように、若宮神社の社殿前には全国でも珍しい**「狛河童(こまがっぱ)」**が鎮座しています。
●狛河童の特徴:
- 左側(向かって右)はメスの河童像
- 右側(向かって左)はオスの河童で、右手に鯛を抱えている
- 願いを込めて撫でると良いことがあるとされ、頭がすり減り皿のようになっている
まるで神様を守るかのように、笑みを浮かべた狛河童たちは訪れる人を出迎えてくれます。
女性の河童像も珍しいですよね。

信仰と民俗:なぜ河童が神社に?
一般的に河童は「祟り」「いたずら」「災い」と結びつけられることが多い妖怪です。
しかしこの若宮神社の河童は、“恩返し”や“守り神”として語られる非常に珍しい存在です。
民俗学的には次のような意味を持つと考えられています:
- 川の神・水の精霊のような土着信仰の名残
- 人と妖怪が共生する思想の象徴
- 「恩を返す霊的存在」への信仰のかたち
訪れるには?現在の若宮神社
若宮神社は、西予市明浜町高山に位置し、緑豊かな山々と清流に囲まれた静かな場所にあります。
- 境内は自由に参拝可能
- 狛河童の石像は記念写真スポットにも◎
- 鯛の奉納伝説を伝える案内板も整備されており、歴史好き・妖怪好きのどちらにもおすすめの場所です
まとめ|河童が祀られる神社が語りかけるもの
恐れの象徴だったはずの河童が、ここでは感謝され、信仰され、神社の一部になっている。
この若宮神社の河童伝説は、単なる怪談ではなく、人と異界の存在が敬意と絆でつながった証とも言えるのではないでしょうか。
もしあなたが明浜を訪れることがあれば――
ぜひ、鯛を抱えた狛河童に会いに行ってみてください。






