お盆とは何か?迎え火・送り火・精霊馬に込められた意味と由来
夏のある日、夕暮れの路地から、かすかに漂う煙の匂い。
やさしく揺れる提灯の灯り。
どこか懐かしいような、けれど不思議な空気に包まれる――
それが「お盆」という、特別な時間の始まりです。
お盆ってなに?
お盆(正式には「盂蘭盆会・うらぼんえ」)は、
亡くなった人の霊が、あの世から一時的に戻ってくると信じられている期間です。
もとは仏教の行事ですが、日本ではさらに
「ご先祖さまを家に迎えて、もてなし、また送り出す」という
古くからの民間信仰が組み合わさっています。
六道(ろくどう)とお盆の関係
人は死後、六つの世界のどこかに生まれ変わると考えられていました。
- 地獄(じごく)
- 餓鬼(がき)
- 畜生(ちくしょう)
- 修羅(しゅら)
- 人間(にんげん)
- 天(てん)
これを「六道(ろくどう)」といい、仏教では迷いの世界とされます。
お盆は、その六道をさまよう霊たちを、家に迎え入れる行事でもあるのです。
迎え火(むかえび)ってなに?
お盆が始まる8月13日ごろ、多くの家庭では玄関先で火を焚きます。

これは「迎え火(むかえび)」といって、
先祖の霊が迷わず帰ってこられるように、道を照らすための火です。
焚くのは、おがら(麻の茎)や、ろうそく。
夕暮れの中、ほのかに燃える火を見つめて、
「おかえりなさい」とつぶやくように手を合わせます。
精霊馬(しょうりょううま)ってなに?
仏壇やお盆棚に飾られる、キュウリとナスの飾り。
割りばしや爪楊枝で足がつけられ、動物のような姿に見えるあれは――
**精霊馬(しょうりょううま)**と呼ばれます。

- キュウリは馬:早く帰ってきてほしいから
- ナスは牛:ゆっくり帰ってほしいから
という意味があるともいわれますが、
それだけではありません。
これらは、霊が宿る「依り代(よりしろ)」としての意味もあり、
地域によっては「動物ではない」とされることもあります。
精霊馬の形や意味は、実は地域によってさまざまです。
たとえば関東では馬と牛に見立てた野菜が主流ですが、長野や山梨などでは形にこだわらず、清らかな供物としてそのまま供えることもあります。
また九州では精霊馬よりも「精霊船」が重視され、北海道などでは精霊馬を用いない家庭も少なくありません。
それぞれの土地に根づいた、先祖との関わり方が反映されているというわけです。
送り火(おくりび)とは?
お盆の終わり、8月16日ごろには
**「送り火(おくりび)」**を焚きます。

来てくれたご先祖さまの霊を、
「また来年ね」と見送るための火です。
とくに有名なのが、京都の「五山の送り火」。
山に「大」の字などの火を灯し、町全体でご先祖を送る荘厳な行事です。
地域によって異なるお盆の風習
お盆の時期は、実は地域によって異なります。
- 東京などの都市部:7月13日〜16日(新暦のお盆)
- 多くの地方:8月13日〜16日(月遅れのお盆)
また、**精霊流し(長崎・熊本など)**や、盆踊りなども地域色豊かに残されています。
仏教と民間信仰の融合の具体例
先程、お盆は日本の古くからある民間信仰と仏教が融合したとご案内しました。では、どのように?というわけで、具体例をまとめてみました。
| 要素 | 仏教 | 民間信仰 |
|---|---|---|
| お盆の起源 | 盂蘭盆経に基づく「餓鬼道に落ちた母を救う話」 | 亡くなった先祖は“山の神”や“家の守り神”になると信じられており、この時期には、先祖が一時帰宅してくる時期という信仰 |
| 精霊棚(仏壇) | 供養の場としての宗教的意味 | 祖先の霊が座って休むための「帰省先」的な感覚 |
| 提灯・火 | 光で霊を導く(法具) | 霊が迷わず帰れるようにという道しるべ(道理) |
| 精霊馬 | 仏教では特に言及なし | 霊の乗り物・依り代として民間で生まれた風習 |
元々日本に根付いていた祖霊信仰と仏教が融合した形ですね。
まとめ:お盆とは、心のなかで再会する時間
お盆は、ただの夏の行事ではありません。
それは――
亡き人を思い出し、語りかけ、また静かに送り出す
日本人の「祈り」のかたち。
年に一度の、小さな再会の時間を、
私たちは今も受け継いでいるのです。
追記:鬼灯の冷徹でも、紹介されてましたね。彼らもお盆はお休みでしたが、お盆が終わると地獄に戻りたがらない亡者を強制送還する鬼の行事と化していましたね。気になる方は見てみてくださいね。Huluのリンク貼っておきます。









