現代人に取り憑く妖怪「いそがし」――江戸時代からの警告?

「いそがし」という妖怪をご存じでしょうか?
その名の通り、「忙しい」という状態が擬人化されたような存在で、江戸時代の妖怪絵巻にもその姿が描かれています。

見た目は人間に近いけれど、やることなすこと落ち着かず、あちこちを右往左往する様子――

それはまるで、現代を生きる私たちの姿をそのまま写し取ったようでもあります。

鳥山石燕が描いた「いそがし」

この妖怪が登場するのは、江戸時代の絵師・鳥山石燕による『今昔百鬼拾遺』です。
石燕は「妖怪」を、ただの怪物ではなく、人間の心や社会の在り方を象徴する存在として描きました。

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その中でも「いそがし」はとくにユニークです。
妖怪の姿でありながら、人間の「多忙」に対する風刺が込められているからです。


「忙」という字の意味

「忙しい」という字をよく見てください。
「心を亡くす」と書きます。

つまり「忙しさ」は、人が本来持っている心の余裕や感情を削っていく状態なのです。
鳥山石燕は、そんな“忙しさ”の恐ろしさを、あえて「妖怪」として可視化しました。


もはや「見えない化け物」ではない?

私たちの身の回りには、日々の仕事、締切、通知音、スマホ、タスク、通勤、家事育児……
何かに追われ続け、「気づけば今日も終わっていた」という人も多いはずです。

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もしかするとそれは、
「いそがし」に取り憑かれている証拠かもしれません。

この妖怪は、私たちにこう語りかけているようです。

「お前はいつも何かに急かされてばかりで、自分の心を見ていないではないか」


忙しさを祓うには?

もちろん、忙しい日々から完全に逃げるのは難しいでしょう。
でも、せめて一日のどこかで「今、自分は何に追われているのか?」と立ち止まってみること。

それが、「いそがし」を祓う一番の方法かもしれません。


おわりに

妖怪「いそがし」は、江戸時代の絵巻に登場しながら、現代の私たちの生活にピタリと当てはまる存在です。
それは、昔から人は“心を亡くす忙しさ”と戦ってきた証でもあるのです。

あなたは今日、「いそがし」に取り憑かれていませんか?

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