雷様の子どもが落ちた井戸と太鼓の伝説|兵庫・桑原村の昔話
雷が来ない村の秘密とは?
日本には「くわばら、くわばら」と唱えると雷が落ちないという言い伝えがあります。
その語源のひとつが、兵庫県三田市の桑原村にある欣勝寺(ごんしょうじ)に伝わる「雷様の子ども」の伝説です。
今回はこの不思議で温かい昔話をご紹介します。
太鼓をたたく雷様の親子

昔々、夏の空でゴロゴロと太鼓をたたいていたのは、雷様とその子ども。雲の上での仕事に張り切っていた子雷様は、うっかり足を滑らせてしまい、雲から地上へ真っ逆さまに落ちてしまいました。
落ちた先は、お寺の井戸

子雷様が落ちた先は、桑原村の欣勝寺にある古い井戸。井戸の中に閉じ込められてしまった子雷様は泣き叫びます。その声に気づいたのが、お寺の和尚さんでした。
最初は「雷様は怖いもの」として逃げようとした和尚さんでしたが、泣き声に心を打たれ、そっと助け出すことにしました。
子雷の願いと「太鼓の証」
助けられた子雷様は、こう言いました。
「ありがとう。もう二度とこの村には雷を落としません。証として、太鼓を置いていきます」

その日から、桑原村では雷が落ちることがなくなり、人々は感謝を込めてこう唱えるようになりました。
「くわばら、くわばら、欣勝寺」
雷除けの言葉の由来
現在でも「くわばら、くわばら」は雷除けのおまじないとして全国に知られていますが、その語源にはいくつかの説があります。その中でもこの桑原欣勝寺の伝説は、有力な由来の一つとされ、地元でも語り継がれています。
欣勝寺には今でも「雷の太鼓」が残されており、昔話が現実の歴史や文化として根付いていることがわかります。
他地域の類話と比較
兵庫の話だけでなく、三重県や茨城県などにも「雷様が落ちた」「雷様のバチを拾った」などの類話があります。いずれも、雷という自然現象に神秘性と親しみを感じていた日本人の姿がうかがえます。
おわりに:自然を畏れ、寄り添う昔話
雷は恐ろしい存在でありながら、恵みの雨をもたらす大切な存在でもあります。「雷様の子ども」の昔話は、そんな自然との関わりを優しく、そしてユーモラスに描いた美しい日本の伝承です。








