『シンデレラ』の原型はエジプトにあった?最古の靴物語「ロドピス」伝説をたどる
私たちがよく知る『シンデレラ』は、17世紀のペローや19世紀のグリム兄弟によって広まりました。
けれども、靴によって身分を超えて王と結ばれる少女の話は、実は紀元前1世紀のエジプトにまでさかのぼるといわれています。
その少女の名は――ロドピス(Rhodopis)。
世界最古の「シンデレラ」と呼ばれる伝説の主人公です。
古代ギリシャの詩人ストラボンの記録
ロドピスの物語は、紀元前1世紀ごろのギリシャの地理学者・詩人ストラボンの著作『地理誌』に記されています。
「ナウクラティスの遊女ロドピスが沐浴しているとき、鷹が彼女の履物をさらい、メンフィスの王のもとに落とした。
王はその靴の美しさに心を奪われ、持ち主を探し出して妃とした。」
― ストラボン『地理誌』第17巻より
この一節が、後世の『シンデレラ』の“靴による出会い”の原型になったと考えられています。
ロドピスの素性と境遇

伝承によれば、ロドピスはもともとギリシャ出身の奴隷で、エジプトに連れてこられたといわれています。
彼女は美しくも身分が低く、他の召使いたちから嫉妬されていました。
ある日、洗濯をしていたロドピスの靴を**鷹(またはホルス神の化身の鳥)**がさらって飛び去り、エジプト王の膝元へと落とします。

それを神のしるしと感じた王は、
「この靴の持ち主こそ、我が妻となる運命の女性だ」
と命じ、全国に使者を送りました。

やがてロドピスが見つかり、王の妃として迎えられた――
これが物語の結末です。
シンデレラとの共通点
| 要素 | ロドピス伝説 | シンデレラ |
|---|---|---|
| 主人公の境遇 | 奴隷、召使い | 継母に仕える娘 |
| 象徴的なアイテム | 靴(履物) | ガラスの靴 |
| 王と出会うきっかけ | 靴を拾った鷹 | 落とした靴 |
| テーマ | 運命と神の導き | 努力と純粋さの報い |
こうして見ると、時代も文化も違うのに、二つの物語は驚くほど似ています。
“靴が身分を超えて運命をつなぐ”という象徴は、古代から人々の心を掴んできたのでしょう。
歴史的背景と象徴

古代エジプトでは靴は地位と身分の象徴でした。
庶民は裸足で過ごすことが多く、履物を持つのは王族や高官だけ。
そのため「靴を持つ女性=特別な存在」として描かれたのかもしれません。
また、鷹が靴を運ぶ場面は、天空の神ホルスが“王の正統な妃を導く”象徴と解釈する説もあります。
伝説の広がり
このロドピス伝説は、ギリシャからローマ、さらにヨーロッパ各地へと語り継がれ、
中世には「靴で身分を越える女性の物語」として定着していきました。
17世紀、シャルル・ペローが書いた『サンドリヨン(Cendrillon)』は、
その流れを受け継いだ“最初の文学作品版シンデレラ”だったのです。
まとめ

『シンデレラ』は単なるおとぎ話ではなく、
**2000年以上前から語り継がれてきた「希望と正義の物語」**なのです。
ロドピスが奴隷から王妃になったように――
どんなに小さな存在でも、運命を変える瞬間は訪れる。
それは今も昔も、世界中の人々を励ます“普遍の夢”なのかもしれません。










