【歴史コラム】中国が台湾を“自国の一部”と主張する理由
――内戦の置き土産として残された「未完の歴史」
台湾をめぐる緊張は、現代のニュースでも度々耳にします。
「中国はなぜ台湾を狙うのか?」
この問いの答えは、決して単純ではありません。
そこには 内戦、国家の威信、軍事戦略、そして世界経済 が複雑に絡み合っています。
このコラムでは、歴史的な観点から、その背景をたどります。
■ 1. すべては “1949年の内戦” から始まった
台湾問題の原点は、第二次世界大戦の直後までさかのぼります。
● 中国大陸で起きた内戦
- 国民党(蒋介石)
- 共産党(毛沢東)
両者の対立が激化し、最終的には共産党が大陸を掌握。
1949年、大陸では 「中華人民共和国」 が成立しました。
敗れた国民党は台湾へ逃れ、そこに政府を構えます。
つまり、中国大陸と台湾には “2つの政府” が並び立つ形になりました。
この「分裂状態」が現代まで続いています。
■ 2. 中国が主張する「台湾は中国の一部」という考え方
中国政府は、台湾の地位についてこう述べます。
「台湾は歴史的に中国の領土であり、内戦で一時的に分かれただけ」
そのため中国では、台湾の統一は
「国家の核心的利益」
とされ、共産党の正統性にも深く関わっています。
もし台湾が正式に独立すれば、
「中国は一度分裂した国家を再統一できなかった」という形になり、
国内のナショナリズムや政府の威信に影響を与えるため、
中国は強硬な姿勢を見せています。
※台湾の事情:独立を急がず現状維持を選ぶ
意外ですが、台湾自身も「独立を宣言したい!」とは考えていません。
台湾が望むのは…
“今のまま(事実上の独立状態)で平和にやっていく”
もし独立を宣言すれば中国が武力行使する可能性が高いため、
台湾も慎重です。
■ 3. 台湾は“太平洋の要衝”――軍事的価値が極めて高い
台湾の地理が、中国の戦略に深く影響しています。
台湾は日本・沖縄から南へ連なる列島の中央に位置し、
これは「第一列島線」と呼ばれます。
- 日本
- 台湾
- フィリピン
- グアム
これらは、アメリカや日本の安全保障ラインでもあります。
もし台湾が中国の勢力下に入れば、
- 中国海軍が太平洋へ進出しやすくなる
- アメリカの影響力が低下する
- 日本の安全保障バランスが崩れる
こうした理由から、台湾は軍事的に極めて重要な位置 にあるのです。
■ 4. 世界の半導体生産の“急所”
現代の経済問題も、台湾を特別な存在にしています。
台湾には TSMC という世界トップの半導体企業があります。
スマホ、車、AI……あらゆる電子機器に使われる半導体の多くが台湾製です。
そのため台湾で混乱が起きると、
世界経済全体に影響が及ぶ可能性があります。
中国にとっても無視できない要因です。
■ 5. 「台湾問題」は、未完の歴史そのもの
台湾をめぐる対立は、決して“突然生まれた”ものではありません。
大陸と台湾に分かれた二つの政府の歴史がそのまま現代に残った結果 です。
- 1949年以降の“内戦の続き”
- 国家の威信を賭けた政治的問題
- 軍事と地理の戦略的重要性
- 現代経済を左右する半導体
これらが重なることで、台湾問題は
アジア最大の緊張の焦点 になっています。
■ まとめ
民話や昔話とは違いますが、台湾問題はまさに
「未完の歴史物語」 です。
どちらが悪で、どちらが善か、そのような話では。
ひとつの国が内戦の結果として二つに分かれ、
そのまま時代が流れ、
それぞれが全く異なる未来を歩む。
しかもその結末は、まだ誰にも分かりません。










