レディサンタはどう誕生した?由来と歴史をわかりやすく解説【女性サンタの文化史】
クリスマスが近づくと、街では赤いミニスカートにふわふわの白い縁取りをまとった「レディサンタ(女性サンタ)」が目に入ります。
ですが、実はこの“女性サンタ”には明確な伝承上の起源はありません。
では、レディサンタはどのように生まれ、いつから広まり、なぜこれほど定着したのでしょうか。
本記事では、民俗学・文化史・商業デザインの視点から、その歴史を辿ります。
1. 原点:サンタクロースは男性の聖人
サンタクロースの原型となるのは、4世紀の司教である**聖ニコラウス(St. Nicholas)**です。
慈善活動で知られ、多くの伝承が残っていますが、当然ながら「男性の聖職者」です。

そのため本来のサンタ像は男性であり、民話・昔話の中に“女性サンタ”が登場することはありません。
レディサンタは、伝承ではなく文化の中で生まれた存在なのです。
2. 19世紀:アメリカで“ミセス・クロース”が創作される
19世紀のアメリカ文学において、サンタの妻として**ミセス・クロース(Mrs. Claus)**が登場します。

- 1849年:短編小説に「サンタの妻」が初めて登場
- 1870年代:新聞や詩に取り上げられ始める
- 1880〜1890年代:絵本・雑誌でキャラクターが確立
ここで初めて、“女性のクリスマスキャラ”が誕生しました。
しかし、この段階ではミセス・クロースは「家庭的で優しいお母さん像」であり、今のような華やかなレディサンタとは異なります。
3. 20世紀前半:商業文化が“女性サンタ服”を生む
レディサンタの本格的な登場は20世紀前半のアメリカの商業文化にあります。
特に以下の場で「サンタを女性化した衣装」が作られました。

- ブロードウェイのショー
- クリスマスステージ
- キャバレー・レビュー
- 広告用ポスター
- 百貨店のイベントモデル
サンタ服を「女性でも着られるように」デザインしたのが始まりで、これが「赤いワンピース」「ふわふわの白ファー」「かわいらしい帽子」の原型になります。
この時点で、レディサンタは
“モダンで華やかなクリスマスの象徴”
となります。もうこの段階でほぼ完成しています。
4. 1950〜1970年代:映画・テレビ・広告で一気に浸透
第二次世界大戦後、アメリカの大衆文化は黄金期に入り、映画・テレビ・広告の影響力が爆発的に増します。
この時期、
- ハリウッド映画での女性サンタ衣装
- 雑誌広告のモデル
- クリスマスショーのダンサー
- 百貨店キャンペーンガール

こうした露出により、レディサンタはセクシーでポップなアイコンへと変化していきます。
この流れはヨーロッパ、日本へも輸入され、
レディサンタ=かわいいクリスマスコスチューム
が定着していきました。
5. 1980年代以降:コスプレ文化とハロウィンが後押し
1980〜90年代には、ポップカルチャーとコスプレ文化がさらに拡大。
- クリスマスイベント
- クラブのパーティー
- テーマパークのショー
- 同人・コスプレ文化
- ハロウィンの盛り上がり
これらが重なり合い、若い女性の間でレディサンタは**“冬のコスプレの定番”**として確立します。

特に日本では、
- 「可愛い衣装文化」が根付いていた
- テーマパークのクリスマスイベントが盛ん
- ハロウィンが急拡大
といった背景があり、レディサンタは瞬く間に一般化しました。
6. 現代:国境を超えた“クリスマスのポップアイコン”へ
2020年代の現在、レディサンタは世界中で愛されるキャラクターになっています。
- インスタグラム
- TikTok
- コスプレイベント
- クリスマスフォトスポット
- グローバルファッションブランドの冬コレクション

SNSの拡散力により、レディサンタは季節のアイコンとして国際的に定着しました。
本来サンタクロースは男性の聖人でしたが、
レディサンタは ポップカルチャー・商業・ファッションの融合によって自然に生まれた新しいクリスマス像なのです。
まとめ:レディサンタは“伝承”ではなく“文化”が生んだキャラ
- 民話上の女性サンタはいない
- 19世紀にミセス・クロース(創作)が誕生
- 20世紀前半に女性サンタ服が登場
- 映画・広告で世界中に広まり定着
- 現代はSNSとコスプレ文化が牽引
レディサンタは、人々がクリスマスを楽しむために生んだ“文化的キャラクター”であり、伝承とは違う魅力を持つ存在です。









