黄龍とは何か ― 四神を統べる“中央の守護神”の正体
中国の神話には、東西南北を守護する四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)がいます。
その四神の中心に立ち、すべてを統べる存在として語られてきたのが 「黄龍(こうりゅう)」 です。
龍そのものは東アジアで最も尊ばれる霊獣ですが、黄龍はさらに格の高い、王権と安定を象徴する特別な龍。
古代中国から日本へと伝わり、国家鎮護や吉兆として崇められてきました。
本記事では、その起源・意味・伝承をわかりやすく解説していきます。
1. 黄龍は五行思想の「中央」を司る霊獣
四神はそれぞれ五行(木・火・土・金・水)に結びついています。
| 方位 | 五行 | 守護神 |
|---|---|---|
| 東 | 木 | 青龍 |
| 西 | 金 | 白虎 |
| 南 | 火 | 朱雀 |
| 北 | 水 | 玄武 |
| 中央 | 土 | 黄龍 |
このように黄龍は、大地そのもの(=土)を象徴し、すべてを支える中心の力を持つ存在です。
古代の思想では、「中央」は王が立つ場所。
そこで中央を守護する黄龍は “正しい王の証” とされ、政治の安定・国家の調和をも象徴する霊獣となりました。
2. 皇帝の象徴 ― 名君の時代に現れる「瑞兆」

黄色は大地の色であり、古代中国では皇帝の色とされました。
そのため黄龍は**皇帝の徳(黄徳)**を象徴し、王朝の安泰を意味する存在として扱われます。
実際に中国の史書には、次のような記述が残っています。
- 「名君が国を治めるとき、黄龍が川に現れた」
- 「黄龍の姿が見えた年は豊作となった」
- 「黄龍の出現は天命が続くしるし」
黄龍が現れることは、民衆にとっても「この国は安泰だ」という希望の兆しでした。
3. 黄龍の姿 ― 黄金に輝き、雲と大地を従える
文献ごとの描写は異なりますが、共通して次の特徴が語られています。

- 黄金色に輝く全身
- 天子(皇帝)に許された「五爪」を持つ高位の龍
- 大地や雲を従える威厳ある姿
一般的な龍よりもさらに神格化され、「天と地をつなぐ導き手」として描かれることもあります。
4. 黄龍の起源と伝承
● 神話の源流は五行思想と天命思想
黄龍の概念は、古代の自然観・方位観に基づく五行思想と、王権の正統性を支える天命思想が合わさって成立しました。
最初から存在していた霊獣というより、思想体系の発展とともに「中央=土の守護」として生まれた存在です。
● 文献での登場
『後漢書』『晋書』『春秋左氏伝』など歴代の史書で、
「黄龍の出現」が瑞兆として記録されています。
5. 日本に伝わる黄龍の信仰
日本でも陰陽道や寺院文化に取り入れられました。
- 国家鎮護の象徴
- 中央(宮中)を守る存在
- 吉兆として寺社の絵画に描かれる
- 九龍図や五龍図の中心に置かれることもある
奈良県・吉野山の金峯山寺には、蔵王権現と黄龍にまつわる伝承も残っています。
まとめ ― 黄龍は“調和と王権”の象徴
黄龍とは、
- 四神の中心に立つ守護神
- 大地(中央・土)を司る霊獣
- 皇帝の正統性と国家の安定を象徴
- 名君が治める時代に現れるとされる瑞兆
という、極めて吉兆とされる黄金の龍です。

日本では厄除け・国家安泰の象徴としても信仰され、今日まで美術・伝承・思想の中で重要な存在であり続けています。










