日本神話9:オオクニヌシとスクナビコナの国造り、そして国譲りの物語
オオクニヌシがスセリビメと結婚した後の話しだ。
スクナビコナとの出会いと国造り
スサノオの厳しい試練を乗り越えたオオクニヌシは、スセリビメと共に新たな使命を胸に葦原中国(あしはらのなかつくに)の国造りを始めました。彼の目指す国は、すべての民が安心して暮らせる地上世界でした。
そんなある日、オオクニヌシが山道を歩いていると、小さな笑い声が聞こえてきました。声の主を探すと、足元に小さな神が座っていました。
「あなたは誰ですか?」
オオクニヌシが尋ねると、その神はにっこり笑いながら答えました。
「私はスクナビコナ。この地を豊かにする術を知っています。一緒に国を造りませんか?」
こうして二人は手を取り合い、国造りを進めました。
スクナビコナは農業や医療、祭祀の方法など、多くの知恵を人々に伝え、オオクニヌシはその知恵を活かして国を導きました。
スクナビコナの旅立ち
国が繁栄し始めた頃、スクナビコナは海辺に現れ、神秘的な船に乗り込もうとしていました。
「どこへ行くのですか?」と尋ねるオオクニヌシに、スクナビコナは穏やかな声で答えます。
「私はこの国に必要な知恵をすべて伝えました。これからは、あなたが自らの力でこの国を導いてください。」
そう言い残すと、スクナビコナは船で海の彼方、常世の国へと旅立っていきました。その別れはオオクニヌシにとって大きな試練であり、自立の始まりでもありました。
高天原からの使者と国譲り
スクナビコナの別れからしばらく経ったある日、高天原(たかまがはら)から使者がやってきました。剣を携えたタケミカヅチとフツヌシという強力な神々です。
「葦原中国を高天原の神々に譲り渡すように」
と告げる彼らに、オオクニヌシは深く考えました。
「私はこの国を愛している。しかし、この国がさらに平和と繁栄を得られるなら、譲ることも一つの選択だろう。」
そう決意したオオクニヌシは、条件を提示しました。
- 出雲大社の建立
「私を祀るための立派な社を建ててください。この国を永遠に見守るために必要です。」 - 民の平和の保証
「この国に住む民が安心して暮らせることを約束してください。」
タケミカヅチたちはその条件を受け入れ、国譲りが成立しました。
国を未来へ託して
オオクニヌシは息子の事代主神(ことしろぬし)に新たな役割を託しました。
「これからこの地は高天原に委ねられる。しかし、葦原中国の繁栄を守る役割をお前に託したい。」
事代主神は父の言葉に深く頷き、国の未来を引き受けました。
出雲大社と永遠の守護神
国譲りの後、オオクニヌシは出雲大社に祀られる神となりました。
「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」として、縁結びや国の平和を見守る存在です。
スセリビメと共に歩んだ試練の日々は、愛と知恵、そして未来を見据える力がいかに大切であるかを物語っています。