古典攻略|源氏物語『若菜(わかな) 上・下』解説|【受験対策】With柴犬
「若菜 上・下」は、源氏物語の後半における重要な章で、光源氏の晩年や、次世代を担う薫や匂宮の物語への橋渡しとしての役割を果たします。
「若菜 上」では、光源氏が女三宮を迎え入れることや紫の上との関係の変化が描かれ、「若菜 下」では柏木と女三宮の密通が発覚し、物語全体が大きく動く展開となります。
簡単なあらすじ
「若菜 上」 光源氏は、晩年に入り、紫の上と穏やかに暮らしていましたが、冷泉帝(藤壺と光源氏の子供、でも立場は弟。)の推薦により、若く美しい女三宮を妻として迎えます。
この結婚は政治的な意味を持ち、光源氏自身も女三宮を愛そうと努力しますが、彼女の幼さや紫の上との関係の変化が複雑な感情を引き起こします。
一方、紫の上は女三宮の登場により、心の平穏を失い、次第に体調を崩していきます。この章では、光源氏の心の葛藤や紫の上の悲しみが深く描かれます。
「若菜 下」 女三宮は光源氏に心を開くことができず、その隙をついて柏木が彼女と密通します。この関係はやがて発覚し、柏木は光源氏の怒りと罪悪感に耐えられず、病に倒れて命を落とします。
さらに、女三宮は柏木との間に薫を出産しますが、これにより光源氏は自らの人生を見つめ直し、隠遁を決意します。紫の上も病によりこの世を去り、物語は悲劇的な展開を迎えます。
受験頻出ポイント
- 女三宮の人物像
- 幼く純粋で控えめな性格。
- 柏木との密通が悲劇の引き金となる。
- 原文: 「いとけなきほどにて、世の例にも似ずあはれなることの多かるべし。」
- 現代語訳: 「幼く無垢で、この世の常識にそぐわないような哀れなことが多い。」
- ポイント:女三宮の幼さや孤独感が、物語の悲劇性を強調。
- 紫の上の悲しみと死
- 女三宮の登場により、紫の上が心身共に衰弱。
- 原文: 「世を思し捨てたるありさまの、いと心苦しうあはれなり。」
- 現代語訳: 「世を捨てたような様子が、とても痛々しく哀れである。」
- ポイント:紫の上の感情の変化や病が光源氏に大きな影響を与える。
- 柏木の悲劇と薫の誕生
- 柏木の密通が発覚し、彼の人生が崩壊。
- 原文: 「心の闇といふもの、思ひ知る人もなかりけるを。」
- 現代語訳: 「心の暗闇というものを、思い知らされる人は他にいなかった。」
- ポイント:柏木の苦悩と、薫の誕生が次世代の物語への伏線となる。
- 光源氏の隠遁
- 光源氏は自身の人生に区切りをつけ、隠遁を決意。
- 原文: 「これよりのちの御ありさま、いとかくれたまひにけり。」
- 現代語訳: 「この後の光源氏の様子は、非常に隠遁してしまわれた。」
- ポイント:光源氏が物語の表舞台から退くことで、新たな展開が始まる。
試験対策に役立つポイント
- 女三宮と柏木の関係
- 女三宮の純粋さと柏木の情熱的な行動が、物語の悲劇を生む。
- 紫の上の悲劇
- 紫の上が光源氏にとってどれほど大切な存在であったかを理解する。
- 世代交代の伏線
- 薫の誕生が新たな物語の中心となる。
- 覚えるべき古典単語
- あはれなり:哀れである
- いとけなし:幼い、未熟である
- 心苦し:気の毒である
- 隠る:隠遁する、姿を消す
例題:読解問題
- 次の文章を読み、問に答えなさい。
- 原文: 「いとけなきほどにて、世の例にも似ずあはれなることの多かるべし。」
- 問1:この文章が示す女三宮の性格を答えなさい。
- 回答:幼く純粋で、哀れさを感じさせる性格。
- 次の文章を参考に、紫の上の心情の変化を現代語で述べなさい。
- 原文: 「世を思し捨てたるありさまの、いと心苦しうあはれなり。」
- 回答:女三宮の登場により、自分の存在意義を失い、世を捨てるような心境になった。
まとめ
「若菜 上・下」は、光源氏の晩年や次世代への橋渡しとして、物語の転換点となる章です。女三宮、紫の上、柏木、薫のそれぞれの物語が複雑に絡み合い、試験頻出のテーマが多く含まれています。これらを理解することで、物語全体の流れを把握することができます。