アーサー王伝説|第3章 湖の乙女とエクスカリバー――真の王に選ばれた瞬間
今回は聖剣エクスカリバーとの出会いです。
※最初は近世のヴァージョンでお届けしましたが、古典に沿った内容に修正しました。
湖の乙女と“真の”エクスカリバー
若きアーサー王がブリテン全土を治め、内乱を鎮めたのち、王国にはひとときの平穏が訪れた。
だが王自身は、その胸に深い問いを抱えていた。
「この剣は、力を示すもの。だが……真に人を治める力とは、何か?」

王位を得たものの、アーサーはまだ自らの使命と向き合いきれてはいなかった。 そんなとき、マーリンは彼をとある湖へと導いた。
■ 湖に立つ乙女
霧がかった朝、アーサーが一艘の小舟に乗り、湖の中心に近づいたときだった。 水面が揺れ、まばゆい光とともに、美しい乙女が湖の中から姿を現した。

白銀の装束を纏い、手には一振りの剣――
「この剣は、選ばれし王のもの。力は与えよう。だが、使い方はそなた次第。」
それが、エクスカリバーであった。
剣身は眩く、柄には古のルーンが刻まれていた。手にした瞬間、アーサーの心に雷のような衝撃が走る。
「これは、民を守るための力だ」
■ 真の王の目覚め
エクスカリバーはただの武器ではなかった。 それは、正義の象徴であり、王にのみ扱う資格がある聖なる剣。
その剣を得たとき、アーサーはようやく理解する。

「我はただ王座にある者ではない。導く者であり、守る者であらねばならぬ。」
若き王の中に、静かな覚悟が生まれた。
湖の乙女は微笑みながら湖へと姿を消し、アーサーは剣を携え、再び陸地へと戻っていった。
その手には、ブリテンを守るための光が握られていた。
【考察】“真のエクスカリバー”とは何か?――二本の剣に込められた意味
アーサー王には、しばしば「二本の剣」が語られます。
ひとつは石から引き抜いた剣。
もうひとつは、湖の乙女から授かった“エクスカリバー”。
この二本の剣は、アーサーの「運命」と「覚悟」を象徴しているとも言われています。
石の剣は「王として選ばれた者」であることの象徴。
それに対し、湖の剣は「王としての責任を背負う覚悟を得た者」に与えられる剣。
つまり、アーサーが“王になる”のではなく、“王であり続けること”を選んだ瞬間が、この第三章なのです。
また、湖の乙女(Lady of the Lake)は単なる妖精ではなく、「試練を与え、力を授ける存在」=アーサーの精神的成長を導く役割も担っていると解釈できます。
【補足】エクスカリバーにまつわる伝説
- 「エクスカリバー」は古フランス語では “Caliburn” とも呼ばれ、ウェールズ神話の剣と関連づけられることも。
- 鞘(さや)には「持ち主の血を流させない」という加護があるとされる。つまり鞘が強かった!?
- 湖の乙女は、後の章でランスロットとも深い関わりを持つ神秘的存在。
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