「奈良の鹿」はなぜ神聖視された？神話から江戸時代の死罪まで知られざる歴史

― 神話と歴史に守られた“神の使い”の正体 ―

奈良公園の鹿は、観光名物として世界中から注目されていますが、ただの可愛い動物ではありません。

そこには日本古来の神話的信仰と、厳格な歴史的背景が存在します。

今回はそんな奈良公園の鹿を詳しく見てみます。江戸時代では鹿を傷つけると・・・

物語の起点は、奈良時代に創建された春日大社。
その主祭神のひとつである**武甕槌命（たけみかづちのみこと）**は、次のような神話を持っています。

常陸国（現在の茨城県・鹿島神宮）の武甕槌命は、白い鹿に乗って奈良の御蓋山（みかさやま）に降臨した。

この神話は、平安時代に描かれた『春日権現験記絵（かすがごんげんげんきえ）』に記され、藤原氏が氏神を奈良に勧請（分霊）する過程で語られたものです。

奈良公園一帯は春日大社の神域であり、鹿はその守護者ともされてきました。
そのため、鹿に対しては宗教的・社会的に極めて厳格な保護が加えられてきたのです。

実はこの神聖視は、江戸幕府の法制度にまで影響を与えました。

このような法律は、日本国内でも極めて珍しく、奈良の鹿がどれほど神聖とされていたかを物語っています。

今日では、奈良の鹿は**「国の天然記念物」**に指定されており、文化財保護法に基づき手厚く守られています。

こうして現代でも、鹿たちは神話と文化の象徴として奈良の地で暮らしているのです。素敵ですね。

「奈良の鹿が神聖」という言葉の裏には、古代から続く神話の重みと、江戸時代の厳しい現実がありました。

この伝承を知れば、奈良の鹿と目が合ったとき、少しだけ深い敬意が湧いてくるかも？