祈りの火をもういちど|アイヌラックルと人々の再出発(4/5)

■ 忘れかけた炎

あの夜、神々の前で「人間たちには学び直す心がある」と言い切ったアイヌラックルは、
神の怒りとともに――いや、それ以上の願いを胸に、人間たちの村へと戻ってきました。

ChatGPT-Image-2025年8月5日-23_16_26 祈りの火をもういちど|アイヌラックルと人々の再出発(4/5)

けれど、そこにあったのは――

火のまわりで笑いながら肉を焼く者。
川の魚を「今日も多くて助かるな」とぞんざいに投げる者。
鳥をしとめても、手を合わせる者はいませんでした。

かつてあれほど目を輝かせて学んだ村の人々が、
“あたりまえ”の暮らしの中で、感謝を忘れてしまっていたのです。


■ 火のまえで静かに

夜になっても村は騒がしく、
木々のざわめきや火のはぜる音よりも、人々の話し声が響いていました。

ChatGPT-Image-2025年8月5日-23_22_16-1024x683 祈りの火をもういちど|アイヌラックルと人々の再出発(4/5)

アイヌラックルは静かに焚き火の前にすわり、
何も言わず、ただ火を見つめていました。

しばらくして、小さな子どもがそっと近づいてきます。
そして、ぽつりと尋ねました。

「ねえ……なんで、火を見てるの?」


■ 目を閉じ、耳をすます

「火はね、人間が神さまから分けてもらったものなんだよ」
「だから、火を見るとね……いろんな声が聞こえてくるんだ」

ChatGPT-Image-2025年8月5日-23_25_11-1024x683 祈りの火をもういちど|アイヌラックルと人々の再出発(4/5)

アイヌラックルはそう答えて、目を閉じました。
子どももまねをして、じっと耳をすませます。

やがて、ひとり、またひとりと人々が集まり、
焚き火のまわりが静けさで満たされていきました。

誰もが、忘れていた何かを思い出そうとしているように――。


■ そして、小さな手が

ChatGPT-Image-2025年8月6日-01_27_31-1024x683 祈りの火をもういちど|アイヌラックルと人々の再出発(4/5)

火が小さくゆらめく中、
年老いた女性がそっと手を合わせ、目を閉じました。

それを見て、隣の男も、子どもも、
ひとり、またひとりと、火の前で手を合わせるのです。

言葉ではなく、心で伝える祈り。

それは、かつてアイヌラックルが神々から託された“感謝のかたち”でした。

You May Have Missed

Translate »