フクロウの伝承とは？不吉の鳥と幸運の象徴という二つの顔
フクロウは地域や文化によって 「知恵・守護」 として敬われる一方、 「死・不吉」 の象徴として恐れられることもあります。つまり「二面性を持つ鳥」として、世界中で特別な存在感を放ってきたのです。
不気味な鳴き声と「死の前触れ」
フクロウは夜の森に響く独特な鳴き声で知られています。古くからその声は人々を震え上がらせ、各地で「不吉の知らせ」として語られました。
東北や九州の一部地域では、夜中にフクロウが家の近くで鳴くと「死人が出る前触れ」と信じられ、「死人鳥（しびとどり）」 と呼ばれました。特に「ホーホー」という声は人の名前を呼ぶとも言われ、呼ばれた人は間もなく亡くなる……そんな恐ろしい噂が広まっていたのです。
また、山中でフクロウの声を聞けば「やまのけ」や怪異が近くに潜んでいる証ともされ、修験者や旅人は決して軽んじませんでした。つまりフクロウは、死や異界の気配を告げる存在 として恐れられてきたのです。
「不苦労」と呼ばれる幸運の鳥
一方でフクロウは、日本では縁起物としても大切にされてきました。
「フクロウ」という響きが「不苦労（苦労しない）」に通じることから、商売繁盛や学業成就のお守りとして親しまれています。木彫りや置物、ストラップなど、今でも縁起物の定番です。
また、フクロウは首がよく回ることから「見通しが利く」、夜でも目が利くことから「先見の明がある」とされ、学問や知恵のシンボルとして尊ばれてきました。
海外でもギリシャ神話においては、知恵の女神アテナの聖鳥として描かれ、「知恵と学問の守護者」 とされています。
二つの顔を持つ鳥
こうして見ると、フクロウは文化や時代によって**「死を告げる不吉な鳥」にも「知恵と幸運をもたらす守護者」**にもなります。
夜の森で鳴くその姿は、恐ろしくもあり、また神秘的で崇高でもある。フクロウはまさに、畏怖と敬意の狭間に立つ存在なのです。
