キョンシーとは?清代の原典・道士の祓い・湘西の伝承までやさしく解説
キョンシーをご存じですか?黄色い符を額に貼り、両腕を前に伸ばして跳ねる“あの屍”です——しかし、このイメージは映画だけの産物ではありません。清代の筆記に記された「屍変」の小話、湘西に伝わる遺体搬送“趕屍(がんし)”、そして香港映画が与えた明快な図像が重なって、いまのキョンシー像ができあがりました。
本稿では、道士の祓い(符籙・桃木剣)を軸に、原典・民俗・ポップカルチャーの三層から、その正体をやさしく解説します。
※漫画や格闘ゲームにも登場してますね。
キョンシー入門:まずは全体像
カンタンに言うと、いま私たちが思い浮かべる**“跳ねる官服姿のキョンシー”**は、次の三つが重なってできたイメージです。
- 清代の筆記にある「屍が動く=屍変」の小話
- **湘西(湖南西部)の“趕屻(がんし)”**という遺体搬送の伝承
- 1980年代の香港映画が作った分かりやすい図像(額の札・ホッピング など)
この三層を順に見れば、キョンシーの“正体”がすんなり入ってきます。
1. 清代の原典にある「屍変」
清代の怪異譚には、死体が動き出す話がいくつもあります。共通するポイントは次のとおり。

- 硬直して歩けず、跳ぶと描かれる
- 水や障害物に弱いという弱点が語られる
- 話によっては跳躍ののちに獣へ変じるといった展開もある
要するに、「跳ぶ」「弱点がある」といった核は映画以前から語られていた、ということです。代表的な書名は**『続子不語』(袁枚)と『閱微草堂筆記』(紀昀)**。
屍変が起きる条件とは?
屍変が起きる条件をまとめてみました。
- 核心要因
急死・非業の死/長く埋葬されない・腐らない遺骸/葬送や供養の不備。 - 引き金(タブー)
猫が棺を跨ぐ(猫跨棺)/雷が棺・墓に落ちる/開棺して外気に触れる(見風)/子の刻など陰気の強い時間帯の露出。 - 埋葬・場所の問題
風水(方位・土地)の不具合/湿地・水漏れ・棺の破損/無縁・改葬の手順違い。
自然発生した場合や何らかのトリガーが発動したものなど、様々ですね。
2. 祓う人=道士が使うもの

キョンシーを鎮める役として登場するのが道士です。使う道具・作法はおおむね以下。
- 符籙(ふろく):いわゆる護符。額に貼って鎮める・封じる
- 桃木剣・銭剣:退邪の象徴として用いる法器
- 鐘・鏡・羅盤など:場や方向を整えるために併用されることも
- 夜明けの鶏鳴や塩など、地域や家相の観念と結びつく要素もある
映画でおなじみの“おでこの札”は、この符籙のわかりやすい図像化です。
3. 「跳ねる屍」を強めた民俗:湘西の“趕屍”
湘西では、遠方で亡くなった人を郷里へ“送る”という伝承が語られてきました。
夜の移送、列を作って進む所作、竹竿で支えて立てる見え方などが重なると、遠目には“跳ねる屍”のように映った——という説明が一般的です。実際の頻度ややり方には議論があるため、これが正解というわけではありませんが、見解の一つとしては理に適っていますね。
4. ポップカルチャーが決定版を作った
そして1980年代の香港映画が、今日のキョンシー像を決定づけました。

- **『鬼打鬼』(1980)→『霊幻道士(Mr. Vampire)』(1985)**へ
- 黄色い符・清代官服・前ならえの姿勢・ホッピングが“お約束”に
- 日本にもブームが波及し、キョンシー=このビジュアルが定着
映画は“分かりやすい型”を提示し、伝承や古典の要素を視覚的に整理して見せたわけです。ハロウィンの定番にもなってますよね。お金の剣(銭剣)等も様々な作品でオマージュされてます。
5. よくある誤解
Q. もち米や黒犬の血って古典の定番?
A. 映画以後に広まった要素が中心。古典の主役は符籙や法器です。
Q. 本当に“跳ぶ”の?
A. 古典では硬直ゆえに跳ぶとされます。両腕前に伸ばしてホッピングは映画の演出ですね。
Q. ゾンビと同じ?
A. 成立も対処も別物。キョンシーは屍変+道教的な退魔という文脈で語られます。
6. まとめ
キョンシーに関してまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。ハロウィンでも見られるお馴染みのキョンシーコス。実は時代背景や時代の流れによる変化が取り入れられた伝承でした。今後、古典の見方も変わってきそうですね。

こうしてみると、古典の解釈を現代にマッチするように伝えていくのは、文化を継承する形としては有効ですね。ただ跳ねてる吸血鬼としか思ってなかったワイ。調べてて楽しかったです。





