九尾の狐とは?日本・中国・韓国の起源や玉藻前・妲己まで完全解説
月の光に照らされ、九つの尾がゆらめく――。
九尾の狐は、日本・中国・韓国の三つの文化にまたがって語られてきた、
東アジア屈指の“妖艶で恐ろしい存在”です。
美しい女性に化けて人を惑わせる玉藻前。
暴君を破滅へ導いた中国の妲己。
魂を喰らう怪異として知られる韓国のクミホ。
一つの“九尾”という存在が、地域ごとにまったく違う姿を見せるのは、
とても興味深い点です。
本記事では、
「九尾の起源」→「日本・中国・韓国それぞれの九尾」→「現代の創作における九尾」
までを体系的にまとめ、
“九尾とは何者なのか?”をわかりやすく解説します。
1. 九尾の狐とは?
九尾の狐(きゅうびのきつね)は、
長い年月を生きた狐が霊力を増し、九つの尾を持つまでに成長した存在を指します。

地域によって性質が大きく異なり、
「吉兆の霊獣」から「妖艶な悪女」まで幅広く描かれます。
要点
- 九本の尾は“霊力の極致”を象徴
- 日本・中国・韓国に広く伝わる
- 多くの創作作品で“美女”として描かれる
- 日本では「玉藻前」として皇室に近い大事件に関わる
2. 九尾の起源は中国にある
実は九尾の最古の記録は中国です。
日本の玉藻前よりもはるかに古い系統を持っています。
2-1 『山海経』に登場する九尾の狐
古代中国の地理書『山海経』には、次のような九尾が登場します。

- 九つの尾を持つ霊獣
- 人に害を及ぼさない
- 見つけると吉兆の証とされる
つまり、最初の九尾は“善なる霊獣”として扱われていたのです。
2-2 妲己(だっき)伝説との接続
時代が下ると九尾は“妖艶な美女に化ける存在”として語られはじめます。
特に有名なのが、
殷の暴君「紂王」に仕えた美女・妲己(だっき)。

- 九尾の狐が妲己に化け、殷王朝を乱した
- 妲己の残虐性は“九尾の悪性”によるものとされた
- 日本の玉藻前の原型と考えられる
この「美女に化ける九尾」は、のちに日本・韓国へ伝わっていきました。
3. 日本の九尾 ― 玉藻前(たまものまえ)の伝説
日本における九尾の代表格が、美しすぎる女性“玉藻前”です。
3-1 絶世の美女・玉藻前
平安時代、鳥羽上皇に仕えた美しい女性。
誰もが魅了されましたが――その正体は九尾の狐でした。

- 博識で、だれよりも聡明
- 上皇の病の原因と疑われる
- 陰陽師・安倍泰親が正体を暴く
3-2 殺生石(せっしょうせき)の伝説
玉藻前は討たれ、正体の狐の姿で逃げ延びますが、
最後は射殺され、その死体は石化します。
この石が「殺生石」。
- 近づく者を殺すと恐れられた
- 能『殺生石』にも取り上げられる
- 現在は栃木県・那須の名所
- 近年“石が割れた”ニュースで話題になった
3-3 その後も現れる“玉藻前”
日本各地で再び現れたとされる話が残り、
彼女の“魔性”は民間伝承として語り継がれました。
4. 韓国の九尾狐 ― クミホ(구미호)
韓国では「クミホ」と呼ばれ、
日本・中国と大きく違う性質を持ちます。

クミホの特徴
- 美しい女性に化ける
- 人間の“肝”や“魂”を狙う
- 多くの怪談に登場する
三国比較(簡易表)
| 地域 | 名称 | 性質 | 主な伝承 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 九尾狐 | 吉兆→悪女 | 妲己 |
| 日本 | 玉藻前 | 妖艶・魔性 | 殺生石 |
| 韓国 | クミホ | 怪異・魂を奪う | 朝鮮怪談 |
5. 創作における九尾 ― 美少女化の理由
現代の九尾は、アニメやゲームで“美女・神獣”として描かれます。

美少女化される理由
- 妖艶・神秘というモチーフが使いやすい
- 九つの尾がビジュアル的に映える
- 陰陽師・妖怪・神話の要素と融合しやすい
- “変化(へんげ)”がキャラクター性と相性がよい
主な登場例
- 『NARUTO』:九喇嘛(クラマ)
- 『Fate』シリーズ:玉藻の前
- 『陰陽師』:九尾キャラ多数
- スマホゲーム・漫画ではほぼ常連
6. 九尾伝説がアジアに広まった理由
九尾が多地域で語られたのは「狐文化」がアジア全体に広がっていたからです。
主な背景
- 日本の稲荷信仰など“狐=神の使い”という思想
- 中国の霊獣文化
- 韓国における怪異・妖怪の発展
- 女性の“美しさ・魔性”が語りの核にしやすい
7. 九尾の象徴 ― 九つの尾が意味するもの
九尾の尾はただの飾りではありません。

九尾の象徴性
- 長寿の象徴
- 霊力が極限まで高まった証
- 変化能力の頂点
- 神獣・妖怪の“完成形”
8. まとめ
九尾の狐は、地域ごとに違う側面を見せる奥深い存在です。
- 中国:吉→悪への変化
- 日本:玉藻前として皇室事件に関わる
- 韓国:怪異的存在クミホ
- 現代:アニメ・ゲームで“最強の美女”として人気
その魅力は時代を超えて語られ、
今もなおアジア文化の中で輝き続けています。









