大人になると怖い『オズの魔法使い』理不尽すぎる物語の正体
── 大人になって読み返すと見えてくる、優しくて残酷な寓話
『オズの魔法使い』と聞くと、多くの人は「子ども向けの明るいファンタジー」という印象を持っているかもしれません。
ところが、大人になって内容を思い出したり、改めて読み返したりすると、こんな感想が浮かびます。
「……これ、結構理不尽じゃない?」
実はその違和感、かなり正しいのです。
ざっくりあらすじ
物物語の主人公は、カンザスに住む少女ドロシー。
ある日、突然起きた竜巻に巻き込まれ、家ごと空へ飛ばされてしまいます。

気がつくとドロシーは、不思議な国「オズ」にいました。
そして彼女が降り立ったその場所で、思いがけない出来事が起こります。
ドロシーの家は、東の魔女の上に落下し、彼女は命を落とします。
その結果、ドロシーは本人の意思とは無関係に、
魔女の力の源である「銀(または赤)の靴」を引き継ぐことになるのです。
この出来事をきっかけに、
東の魔女の姉である 「西の魔女」 は、
靴を取り戻すためドロシーを執拗に追うようになります。
元の世界に帰りたいドロシーは、
「エメラルドの都にいるオズの大魔法使いなら願いを叶えてくれる」
と教えられ、旅に出ることを決意します。

その道中で彼女は、
- 脳が欲しいと願う「かかし」
- 心が欲しいと願う「ブリキ男」
- 勇気が欲しいと願う「ライオン」
と出会い、仲間と共に黄色いレンガの道を進みます。

やがてエメラルドの都に辿り着いた一行に対し、
オズの大魔法使いが出した条件は、
「西の悪い魔女を倒してくること」
こうしてドロシーたちは、
自分たちを追ってくる魔女を討伐するという、
極めて皮肉な使命を背負わされることになるのです。
理不尽ポイント①
魔法使いが、全然すごくない

長い旅の末に辿り着いたオズの正体は、
- 派手な演出で自分を大きく見せていただけ
- 実は普通のおじさん
- 魔法は使えない
という、見事なハリボテ。
「偉大なる存在」と信じて必死に頼った相手が、
実は中身のない権威だった──
ここでまず、大きな肩透かしを食らいます。
理不尽ポイント②
クエスト内容がブラックすぎる
オズが願いを叶える条件として出した指示は、
「西の悪い魔女を倒してこい」

冷静に考えると、
- 子どもに討伐任務を押し付ける
- 自分は一切動かない
- 失敗しても責任は取らない
- 魔法使いではない普通のおじさんの無茶ぶり
今の感覚で見ると、かなり無責任です。
「権威者が、安全な場所から無茶な仕事を命じる」
この構図、どこか現代社会にも見覚えがありませんか。
理不尽ポイント③
そもそも、全部最初から持っていた

物語最大の理不尽ポイントはここです。
- かかしは、最初からちゃんと考えて行動していた
- ブリキ男は、誰よりも思いやりがあった
- ライオンは、何度も仲間を守る勇気を見せていた
そしてドロシーも、
帰るための力は最初から「靴」に備わっていました。
つまり結論は、
「あなたたち、最初から全部持っていました」
……それ、早く言ってほしかった。
OVA作品「ジャイアントロボ 地球が静止する日」を彷彿とさせます。
「あんまりじゃないですかぁ・・・お父さん!なんで言ってくれなかったんですかぁ!!」
なぜ、こんな物語なのか
『オズの魔法使い』は、
達成感やカタルシスを重視した物語ではありません。
これは教訓型の寓話です。
伝えたいメッセージは一貫しています。

- 権威や肩書きは、必ずしも中身を保証しない
- 自分に足りないと思っているものは、すでに持っていることが多い
- 外に「答え」を求めすぎると、振り回される
だからこそ、
- 努力の報酬があっさりしている
- 成長が「能力の獲得」ではなく「自覚」に留まる
- 読後にスッキリしない
この構造が、
大人が読むと「理不尽」に感じられる理由です。
大人になって読むと、むしろ怖い
この物語を少し視点をずらして見ると、

- 国家
- 宗教
- 教育
- 指導者
- 成功者の言葉
そういったものへの批評としても読めます。
「偉そうに見える存在ほど、実は空っぽかもしれない」
「答えは外ではなく、自分の中にある」
子ども向けの物語の顔をしながら、
かなり辛辣なメッセージを含んでいるのです。
おわりに
『オズの魔法使い』は、
- 優しい物語です
- でも、甘い物語ではありません
だからこそ、大人になった今読むと、
少し苦く、少し理不尽で、妙に現実的に感じられます。
そしてその違和感こそが、
この物語が長く読み継がれてきた理由なのかもしれません。










