さやえんどうじいさん|嘘つきが本物を呼んだポーランド昔話と教訓
「うそをついたらダメ」
子どものころ、何度もそう言われたはずなのに、
なぜ人は、つい“ちょっとだけ”盛ってしまうのでしょう。
今回紹介するのは、ポーランドに伝わる昔話──
『さやえんどうじいさん』です。
この物語の面白さは、ただの教訓話ではなく、
うそが、異界の住人を呼び出してしまう
という、ほんの少し怖くて不思議な味があるところ。
1. うそつきのおじいさん
むかし、ある村に
口から生まれてきたみたいな うそつきのおじいさんがいました。

悪い人ではありません。
ただ、恥をかくのが嫌で、つい口先でごまかしてしまう。
ある日も、みんなの前でつい言ってしまいます。
「わしはな……さやえんどうじいさんと友だちなんだ」
村の人たちは顔を見合わせました。
(また始まった)
そんな顔です。
2. 「見える」と言ったら、本当に出てきた
しかし──その夜。
小さな声がしました。
「……呼んだかの?」

窓の隙間から、
豆粒みたいに小さいおじいさんが入ってきたのです。
顔はしわしわ、でも目はキラッとしていて、
身体は小さいのに、どこか堂々としている。
そう。
本物の さやえんどうじいさんが現れてしまったのです。
3. お城の問題――お姫様の針子(はりこ)がピンチ!
噂はあっという間に広がり、
おじいさんはお城へ呼び出されます。
「さやえんどうじいさんと友だちだというな?
ならば我らの困りごとを解決してみせよ」
困りごととは──

お姫さまの針子達が、針仕事(ぬいもの)ができなくなったこと。
大切な仕事を任される針子なのに、
手が動かない、目が定まらない、糸が通らない……。
誰も治せず、城は困っていたのです。
4. さやえんどうじいさんの力は凄かった
おじいさんは震えました。
(まずい。うそが大きくなりすぎた)
しかし、そのとき。
小さな声が、袖の中から聞こえます。
「安心せい。わしが助けてやろう」

さやえんどうじいさんは、
ちょこちょことお姫さまのところへ行き、
不思議な方法で針子の力を元に戻してしまいます。
お城は大喜び。
王さまは言いました。
「おお、すごい! さすがだ!」
5. うそつきは、またうそを重ねてしまう
……ところが。
おじいさんは、つい言ってしまうのです。
「まあ……わしの力じゃ」

この瞬間、物語は“教訓話”へ加速します。
うそは一度でもつくと、
次のうそで“補強”しないと崩れてしまう。
そして、城の人々はさらに難題を押しつけます。
「ならば次はこれも、あれも!」
どんどん追い詰められ、
ついにおじいさんは泣きそうになります。
6. 最後に救ったのは、異界の小さな友
絶体絶命のそのとき。
さやえんどうじいさんが現れて、
またおじいさんを助けます。

そして言うのです。
「うそをつくな。
だが、おぬしは悪人ではない。
だから今回は助けてやる」
おじいさんは頭を地面につけ、
「もう二度と、うそはつきません……」
と誓いました。
それを聞いたさやえんどうじいさんは、
ふっと笑って姿を消します。
この話の教訓が“深い”理由
この物語が面白いのは、
「うそ=悪」
で終わらないところです。

うそつきのおじいさんは確かに困った人ですが、
“本当に罰だけで終わる話”ではない。
さやえんどうじいさんは、
何度も助けてしまう。
つまりこの話は、
「うそを叱る話」ではなく、
「人間の弱さを救う話」なんです。
そして、ここが最も怖いポイント。
口先のうそが、異界の存在を呼ぶ
「いないものを、いると言う」
「見えないものを、見えると言う」
すると、世界はそれに合わせてしまう。
昔話らしい **言霊(ことだま)**の怖さが、ちゃんと入っていますね。
※嘘で「幽霊がいる」って言ったら本当にいたっていう怪談ありましたよね・・・?
出典・類話について
- 本話は、児童向けの「世界の民話」系の本やサイトで、ポーランドの昔話として紹介されていることが多いです。
- 「うそつきが自分を大きく見せた結果、異界とつながる」という型は世界各地にあり、教訓だけでなく、民俗学的には“言葉が現実を引き寄せる”話型にも入ります。










