最恐魔女ババ・ヤガーとワシリーサの物語
今回はロシアや東欧の民話に登場する有名なキャラクター「ババ・ヤガー」の話し。少し読みやすいように書き換えました。また、イラストもところどころ変えてます。
ロシアの民話には、深い森に住む恐ろしい魔女ババ・ヤガーがたびたび登場します。その中でも有名なのが、美しい少女ワシリーサとの物語です。
このお話は、単なる怖い話ではありません。少女の知恵と勇気、そして母の愛が試される、教訓に富んだ物語でもあるのです。
ババ・ヤガーとワシリーサ ― 魔女の家に向かった少女の物語
むかしむかし、ロシアのある村に、ワシリーサという優しくて美しい娘がいました。母親はワシリーサが幼いころに病で亡くなりましたが、亡くなる前に、小さな人形をワシリーサに手渡してこう言いました。

「この人形は、おまえを守ってくれる。困ったときは、夜にひそかに食べ物をあげて相談しなさい」
母の死後、父は再婚します。しかし継母とその連れ子たちはワシリーサに辛く当たり、重い仕事ばかりを押しつけました。

けれどもワシリーサは母の人形のおかげで、どんなに困難な仕事も不思議とこなすことができました。
闇に沈んだ家と魔女の館
ある日、家の明かりがすべて消えてしまい、継母はワシリーサに言いました。
「森の奥に住むババ・ヤガーのところに行って、火をもらっておいで」

それは少女にとって死を意味する命令でした。なぜなら、ババ・ヤガーは人を食う恐ろしい魔女として知られていたからです。
けれどワシリーサは、人形とともに暗い森を進み、やがて奇妙な家にたどり着きます。その家は鶏の足の上に立ち、ぐるぐると回っていました。そこに住んでいたのが、あのババ・ヤガーでした。

試練と知恵
ババ・ヤガーはワシリーサに火を与える代わりに、いくつもの難題を命じました。とても人間の力では一晩でこなせないような仕事ばかりです。ですが、ワシリーサは人形の助けを借りてすべてやり遂げます。
驚いたババ・ヤガーは問いかけます。
「誰が手伝っている?自分の力だけではないはずだ」
ワシリーサは正直に、人形の存在と母の言葉を話しました。
それを聞いたババ・ヤガーは激しく怒るかと思いきや、むしろ興味を示し、それ以上は深く追及しませんでした。魔術師として興味があったのでしょう。
それから、数々の難関をクリアし、成長したワシリーサ。

ついにワシリーサは、火のともった骸骨の目をした松明をもらって家へ帰ります。
継母たちの最期と新たな人生
家に戻ったワシリーサがその松明をかざすと、骸骨の目から燃え上がる火が継母と義姉たちを焼き尽くしてしまいました。

それは、ババ・ヤガーが授けた“真実を照らす火”だったとも、邪を焼き払う清めの炎だったとも言われています。
その後、ワシリーサは町に出て、機織りの名人として名を上げ、ついには王子の目に留まり、妃となったという幸運な結末も語られています。

おわりに:母の愛と自己の知恵

この物語は、魔女に立ち向かう恐怖譚であると同時に、親から子へと受け継がれる「見えない力」の物語でもあります。ババ・ヤガーという存在は、ただの“悪”ではなく、試練を通して真価を試す存在として描かれている点も興味深いですね。
あなたなら、どんな「人形」を心の中に持っていますか?



