恋愛依存・恋愛に疲れたあなたへ――「現代版・親指姫」が語る依存からの解放の物語
愛されたいあまりに自分を見失っていませんか？
「親指姫」を現代の「恋愛依存に苦しむ女性」が“自分で生きる勇気”を取り戻すまでの物語としてお届けします。
所有される愛から、自分を取り戻す愛へ。
掌の中の恋
彼女は、生まれたときから「小さかった」。
背も、声も、そして心までも。
最初の恋人は、彼女を「かわいい」と言って撫でた。
だがそれは、愛ではなく所有だった。
外の世界に出ようとすると、彼は言った。
「外には危険が多いよ。僕のそばにいなよ。」
その優しさが鎖になって、彼女の自由を奪っていった。
第一章：カエルの恋 ― 愛されるための変形
次の恋人は、彼女に「もっと自分に合う人になってほしい」と言った。
彼の理想に合わせて服を変え、話し方を変え、SNSの投稿も変えた。
「君は変わったね」と言われるのが嬉しかった。
けれど鏡を見ると、そこにはもう自分の顔がなかった。
愛されることに全てをかけた彼女は、
いつしか“誰でもない人”になっていた。
第二章：モグラの恋 ― 暗闇の安定
疲れ切った頃、彼女はある男性に出会う。
優しく、経済的にも安定していた。
彼は言った。
「もう無理しなくていい。僕が守るから。」
地下の部屋、暖かい布団、何も起こらない日々。
安心と引き換えに、彼女は光を見ることをやめた。
心は静かだった。でも、静かすぎた。
彼女は思う――
「これって、生きているって言えるのかな？」
第三章：ツバメとの出会い ― 風の声
ある夜、窓の外から風の音がした。
ビルの隙間を抜けるその声が、なぜか懐かしかった。
カーテンが揺れ、風が彼女の頬をなでた。
まるで誰かが囁くように――
「行こうよ、外の世界へ。」
その声に、心の奥で何かがほどけていく。
エピローグ：光の中の親指姫
朝、彼女は初めて自分の服を選び、髪を結んだ。
鏡の中の自分が微笑む。
それは誰の理想でもなく、自分で選んだ微笑み。
街の風は冷たかった。けれど、心地よかった。
彼女は思う。
「愛されるより、いまは“生きている”と感じたい。」
小さな親指ほどの勇気が、
彼女を――
自由にした。
あとがき：現代に生きる“親指姫”たちへ
恋愛は人生を彩るものだけれど、
それに溺れると「自分」という軸を失ってしまうことがあります。
この物語の親指姫は、愛を否定したわけではありません。
ただ、「誰かの手のひら」ではなく、
「自分の足」で生きる道を選んだだけなのです。
現代社会で揺れる全ての“親指姫”たちに、
ほんの少しの勇気を――。
