アリババを救った女・モルジアナとは何者か|語られなかった真の英雄
「開けゴマ」という言葉は知っていても、
モルジアナという名前を知っている人は、ほとんどいません。
しかし、もし彼女がいなければ、
アリババは確実に命を落としていたでしょう。
『アラビアンナイト』に収められた「アリババと40人の盗賊」は、実のところ、一人の女奴隷の知恵と判断によって成り立っている物語なのです。
モルジアナとは誰か

モルジアナの立場
モルジアナは、物語の中で次のような立場に置かれています。
- 身分:奴隷
- 財産:なし
- 権力:なし
- 発言権:ほぼなし
物語世界において、
もっとも弱い立場の人物だと言えるでしょう。
それでも彼女は、
誰よりも早く異変に気づき、
誰よりも早く行動します。
モルジアナが行った決定的な行動
① 家の印に最初に気づいた
盗賊たちは、
アリババの家を見分けるため、扉に目印をつけました。
この異変に気づいたのは、
主人でも家族でもなく、
モルジアナただ一人でした。

彼女は誰にも相談せず、
周囲の家すべてに同じ印をつけます。
こうして盗賊の計画を、静かに無効化しました。
時間がなかったため、
迷わず即断した判断だったのです。
② 油壺に潜む盗賊を単独で処理した
盗賊たちは油壺に隠れ、
夜を待って家を襲う計画でした。

それに気づいたモルジアナは、
- 主人に知らせることなく
- 許可も求めず
- その場で判断し
熱した油を注ぎ、
盗賊たちを全員倒します。手段のエグさもポイントです。
この行動が少しでも遅れていれば、
家は確実に襲われていたでしょう。
③ 踊りに見せかけて首領を討つ
最後に残った盗賊の首領は、
宴の場に招かれます。

モルジアナはそこで、
剣舞を披露しました。
誰も疑いません。
彼女はただの女奴隷だと思われていたからです。
その油断の中で、
彼女は首領を討ち、
脅威を完全に断ち切りました。
なぜモルジアナは語られないのか
これほどの活躍をしながら、
モルジアナの名はあまり知られていません。
別の作品なら主人公ですよね。

理由は、はっきりしています。
- 奴隷という身分
- 女性という立場
- 物語の表の主人公ではないこと
アラビアンナイトでは、
世界を救った人物が、必ずしも英雄として語られるわけではありません。
むしろ、
静かに行動した者ほど、語られずに残る
という価値観が、物語の底に流れています。
アリババとの対比で見えるもの
アリババとモルジアナを比べると、
物語の構造がはっきりします。

- アリババ:偶然によって生き延びた
- モルジアナ:判断によって生き延びた
アリババは善人かもしれません。
しかし、善意だけでは世界は守れないという現実が、
この物語には描かれています。
これは英雄譚ではなく、
生き残るための物語なのです。
この物語が今も語り継がれる理由
モルジアナの行動は、私たちにこう語りかけます。

- 声を上げなくてもいい
- 評価を求めなくてもいい
- 正しい判断は、静かに行われる
そして時に、
世界を救うのは、
もっとも立場の弱い者である
という事実を、そっと示してくれます。
まとめ

モルジアナは英雄ではありません。
しかし、彼女がいなければ、
物語は途中で終わっていたでしょう。
アラビアンナイトが本当に描いたのは、
魔法でも財宝でもありません。
名もなき者の、沈黙した知恵だったのです。








