ドゴン族とシリウスBの謎|宇宙人伝説は本当か?伝承と科学のはざまを探る
西アフリカ・マリ共和国に暮らす少数民族「ドゴン族」は、独自の宗教と神話体系を持ち、現代に至るまでその文化を継承しています。
中でも注目を集めたのが、「肉眼では見えない恒星シリウスBの存在を知っていた」という話。
これは事実なのでしょうか? それとも後世の脚色や誤解? この記事では、伝承と科学の両側面からこの話題を探っていきます。
第一章:ドゴン神話の「ノンモ」と宇宙の始まり
ドゴン神話では、宇宙は創造神アマ(Amma)によって生まれ、そこに天から降り立った水の精霊「ノンモ(Nommo)」が秩序をもたらしたとされます。

- ノンモは空から船で降りてきた
- 地球に水や暦の概念を教えた
- 宇宙は「螺旋」や「水」と深く結びついている
この物語が、のちに「宇宙人の訪問」として再解釈されるきっかけとなりました。
第二章:肉眼では見えない「シリウスB」を知っていた?
シリウスは、全天で最も明るく見える恒星です。しかしその正体は、シリウスAとシリウスBという二重星系。

- シリウスBは白色矮星で、地上から肉眼での観測は不可能
- 西洋天文学では19世紀にようやく発見された
- それにもかかわらず、ドゴン族の一部長老は「シリウスの伴星」や「50年周期」を語ったという記録が残っています。
つまり、肉眼で見えるはずのないシリウスBを認識できていたということになります。
第三章:1930年代の調査で明らかになった「宇宙的知識」
この話を広めたのは、1930年代のフランス人学者マルセル・グリオールとジェルメーヌ・ディテルランによる民族学調査です。
彼らの著作『Le Renard Pâle(蒼白い狐)』には以下の内容が記録されました:
- シリウスには「ポ・トロ」という重く小さな星がある
- それは50年周期で主星を公転している
- ノンモはその星から来た存在である
これが事実であれば、当時の西洋人すら観測に苦労していた情報を持っていたことになります。
第四章:脚色・誤解の可能性とその検証
この伝承については、多くの研究者から懐疑的な視点も提示されています。
● 学者が与えた知識を“逆輸入”した可能性
- 調査隊自身がシリウスBを知っており、会話の中で伝えてしまった可能性がある
● 部族全体の共通知識ではなかった
- 長老たちのみが語った内容であり、文化的象徴の域を出ない可能性も
● 神秘主義者による誇張
- エリッヒ・フォン・デニケンのような作家によって「宇宙人が地球に来た」説として利用された
第五章:それでも残る神話の深さと神秘

誤解や脚色の可能性を考慮してもなお、ドゴン族の宇宙観は独特の深みを持ちます。
- 「宇宙は水から始まった」という概念
- 宇宙の構造を「螺旋」で表現
- 時間や季節に関する洗練された暦法
これらは現代科学とは別のアプローチから、人類の宇宙への直観的理解を示すものとも言えるでしょう。
結び:神話は「宇宙の真理」に触れているのかもしれない
ドゴン族の神話に登場する「宇宙から来た存在」という表現は、現代の私たちにとっては「宇宙人」のように見えるかもしれません。

ですが、それが本当に宇宙人なのか、あるいは人類が自然と向き合って育んだ象徴の物語なのか――。
その答えはいつか判明するかもしれませんが・・・「不明」のままがいいかもしれませんね。
参考文献・資料
- Marcel Griaule & Germaine Dieterlen『Le Renard Pâle』(1965)
- Robert Temple『The Sirius Mystery』(1976)
- Walter van Beek, “Dogon Restudied: A Field Evaluation of the Work of Marcel Griaule” (1986)
- Carl Sagan『Broca’s Brain』(1979)