和邇(わに)とは?古事記・日本書紀に登場する海の怪物の正体を解説【日本神話の伝承】
日本神話には、山の神・風の神・火の神と並んで「海」を司る神々が多く登場します。
その中でも異彩を放つのが「和邇(わに)」という存在。
「ワニ」と聞くと現代では動物を思い浮かべますが、古代の人々にとっては“海の化け物”を意味していました。
和邇とは?

『古事記』『日本書紀』に登場する「和邇」は、海に棲む巨大な怪物として描かれます。
漢字では「鰐」「和邇」と表記され、時に「海神の使い」ともされます。
その姿については明確な記述が少なく、ワニ説・サメ説・龍蛇説など諸説あります。
有名な登場シーン
和邇の代表的な登場は、『古事記』における「稲羽の素兎(いなばのしろうさぎ)」の物語。
白兎が海を渡るため、和邇に「背中を並べて渡らせてほしい」と頼み、騙して渡ろうとします。
怒った和邇に皮を剥がれ、泣く兎を大国主神が救う——という有名な神話です。

このエピソードからも分かるように、和邇は単なる怪物ではなく、自然と神々、人間の関係を象徴する存在といえます。
和邇の正体に関する考察
研究者の間では、和邇は「ワニ(爬虫類)」ではなく「鮫(さめ)」を指す説が有力です。
古代日本には実際のワニはいませんでしたが、海に棲むサメは漁民にとって脅威であり、畏敬の対象でもありました。

また、海の彼方にある「常世の国(とこよのくに)」へ渡す存在とされることもあり、異界との境界を守る象徴的存在と見ることもできます。
和邇と海神信仰
古代日本では、海の神=綿津見神(わたつみのかみ)や龍神と深く結びついていました。

和邇もまたその一部として、“海の力”を体現する聖なる怪物だったのでしょう。
海が生活の中心だった時代、人々はその恐ろしさと恵みを一体の存在として敬いました。
まとめ

和邇(わに)は、古代人が“海”という未知の世界をどう理解していたかを示す象徴的な存在です。
単なる怪物ではなく、神話の中で自然への畏敬と共生の象徴として描かれています。
「海の化け物」というより、「海の神の化身」としての和邇を感じ取ると、その物語の深みが一層増すでしょう。





