フランケンシュタイン第3章|復讐と破滅、創造主と怪物の最期の旅
捨てられ、拒まれ、そして怒りに目覚めた怪物。
その訴えに、ヴィクター・フランケンシュタインはついに決断します――
「もう一体、怪物の“花嫁”を作る」と。
しかし、それは新たな悲劇の始まりにすぎませんでした。
花嫁の破壊、復讐の始まり

怪物との取引に応じたヴィクターは、国外に移動し、再び“創造”の研究に取りかかります。
けれど、彼の心は揺れていました。
「もし、怪物とその花嫁が繁殖すれば、人類に危険が及ぶのではないか――」
その恐れから、ヴィクターは完成直前の“花嫁”を破壊してしまいます。

この裏切りを目撃した怪物は、怒り狂い、こう言い放ちます。
「お前の結婚式の夜に、私は戻ってくる――」
愛する者たちの死
その後、ヴィクターはスイスに帰国し、恋人エリザベスと結婚します。
しかし、怪物の言葉は“脅し”ではありませんでした。

結婚式の夜、怪物は本当に現れ、エリザベスを殺してしまいます。
さらにショックを受けたヴィクターの父も、後を追うように命を落としました。
すべてを失ったヴィクターは、復讐を決意します。
極北への追跡
ヴィクターは怪物を追い、ヨーロッパを横断し、ついには氷と雪の広がる北極圏へと足を踏み入れます。

怪物もまた、ヴィクターに自分を追わせるように、痕跡を残していきました。
ふたりの追いかけ合いは、やがて極地探検家ロバート・ウォルトンの船に辿り着きます。
ヴィクターは重い病にかかり、ウォルトンに自らの過去を語ったのち、静かに息を引き取ります。
怪物の最期の言葉
ヴィクターの死後、怪物が船に現れます。
彼は死体のそばに立ち、こう語ります。

「私は愛を求めただけなのに、誰からも理解されなかった。
創造主を失った今、私には何の意味も残されていない――」
怪物はウォルトンに「遠い北の果てに向かい、自らを焼き捨てて消える」と言い残し、闇の中へ姿を消します。ウォルトンは静かに彼の言葉に耳を傾けた一人でした。
結び:創造の責任と孤独の物語
『フランケンシュタイン』は、怪物の恐ろしさを描いたホラーではありません。
それは、人間が「知と力」を持つことで何を生み出し、何を背負わねばならないのかを問う物語です。
ヴィクターも怪物も、誰よりも人間的な苦しみと孤独を抱えていました。
そしてその物語は、200年以上経った今も、私たちに問いかけ続けています。
◆ なぜ追うのか?
ヴィクターは「復讐」のために怪物を追いかけます。
しかし本当のところ、彼は次第に「自分の罪」「自分が生んだ存在の責任」から逃げられず、それを“消し去る”ために追っているのです。
一方で怪物は、「自分を創った人間に見捨てられた悲しみ」と「誰にも愛されなかった痛み」を抱えて、ヴィクターにそれを“わからせよう”として誘導するように痕跡を残していきます。
つまりこの追いかけっこは…
◆ 創造主と被造物の和解なき対話
- ヴィクターは 「自分は悪くない」 と証明したい。
- 怪物は 「あなたが私をこうした」 と訴えたい。
けれど、ふたりの対話は最後まですれ違いのまま終わります。
◆ 結局、何が残ったのか?
この追跡劇の果てに待っていたのは:
- 創造主ヴィクターの死
- 怪物の絶望的な“独白”と自殺宣言
ふたりは互いを理解できなかったまま、「科学と倫理」「孤独と共感」というテーマだけが読者に強く残されます。
◆ つまり…
この「追いかけっこ」は
“人間は、自分が創ったものとどう向き合うのか”
という、現代にも通じる重い問いを投げかけているのです。