ドラキュラ伯爵の城へ――若き弁護士が体験した恐怖の始まりとは?【原作解説】全3回(1回)

今や知らない人の方が珍しい「ドラキュラ」という言葉。狼男やフランケンシュタインなどと同様に、超が付くほど有名なキャラクターですよね。

ですが、以外と原作は知られていないようなので、今回から3回に分けてご案内します。興味が出たらブラムストーカーのドラキュラを読んでみてくださいね。

城への招待――ジョナサン・ハーカーの恐怖の始まり

西暦1893年の春、ロンドンの若き弁護士、ジョナサン・ハーカーは、不動産の契約業務を任されて、はるばる東欧トランシルヴァニアへと旅立ちました。

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目的は、古城に暮らす貴族――ドラキュラ伯爵がイギリスで購入した邸宅の手続きを進めること。その頃の彼は、まだこの旅がどれほど運命を狂わせるものかを知る由もありませんでした。

不吉な始まり

汽車を乗り継ぎ、馬車に揺られて、文明から遠ざかるようにして山奥へと向かう道すがら、ハーカーは村人たちの様子に違和感を覚えます。人々は「ドラキュラ」の名を聞くと顔を曇らせ、誰もが彼の行き先に触れようとしません。

ある老婆は、別れ際に小さな十字架を渡し、ハーカーの無事を祈ってくれました。意味もわからぬまま、それを首にかけて彼は最後の宿をあとにします。

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そして、山の闇が濃くなったころ、彼の前に一台の馬車が現れました。黒衣の御者が操るその馬車は、音もなく山道を駆け抜け、霧の中、そびえる古城の門へと彼を運んだのです。

謎めいた伯爵との出会い

ようやく辿り着いたドラキュラ城。扉がきしみ、暗がりの中から現れたのは、背が高く、異様に鋭い眼をした老人でした。

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「ようこそ、私の館へ。お待ちしておりましたよ。ミスター・ハーカー」

伯爵は礼儀正しく、やや古風な英語を話しましたが、その声音にはどこか凍てつくような冷たさがありました。

彼は晩餐を用意していましたが、自分は何ひとつ口にしません。鏡台の前で髭を剃っていたハーカーが、手を滑らせて頬を切ると、伯爵の目がぎらりと光ります。

「その血を……どうか、無駄にしないように」

伯爵は、鏡に映っていなかったのです。

城という名の牢獄

数日間の滞在――それが当初の予定でした。ところが、伯爵は「まだ帰ることはできません」と静かに告げ、城の外には出られないように鍵をすべて取り上げてしまいます。

日中、伯爵は姿を見せず、ハーカーはひとりで館を探検し始めます。そこには、何百年も時が止まったかのような部屋、奇妙な書物、閉ざされた扉の数々がありました。

ある夜、彼は禁じられた西の回廊へと足を踏み入れます。そこで出会ったのは、三人の美しい女たちでした。彼女たちは甘い声で囁きながら近づき、ハーカーの喉元へと唇を寄せようとします。

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けれど、そのとき、伯爵が現れて怒号を放ちました。

「彼は私のものだ!!今は、まだ・・・!!」

まるで獲物を他に奪われたくないような、そんな執念が感じられました。

命を賭けた脱出

それからの日々、ハーカーは必死に伯爵の秘密を探ります。ある日、彼は地下室で、棺の中に眠る伯爵の姿を見つけます。その顔は不気味なほど若返っており、まるで生命を吸い込んでいるかのようでした。

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伯爵が夜な夜な外出していることも明らかになり、ハーカーは恐怖のあまり、心が壊れそうになります。

このままでは命が危ない――そう悟った彼は、塔の窓からロープを使って下の部屋へとよじ降り、命懸けで逃走経路を探し始めます。

そしてある夜、嵐の中、彼は意を決して城からの脱出を試みるのでした。


こうして、『ドラキュラ』という物語は、孤立した城での逃亡劇から始まります。
吸血鬼ドラキュラの影はまだほんの一部しか現れていませんが、ジョナサン・ハーカーの恐怖体験を通じて、その存在の禍々しさは静かに読者の胸に忍び込んでくるのです。

次回は、ドラキュラが霧とともにロンドンに現れ、新たな犠牲者を求めてさまよう様子をお届けいたします。

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