ドラキュラとの最終決戦――ミナを救うための聖戦【原作解説】
墓地でルーシーを解放した夜から、ヴァン・ヘルシングたちは決意を新たにしました。
――まだドラキュラは生きている。
彼を放っておけば、次に命を奪われるのは誰か分からない。
そしてその恐れは、静かに、しかし確実に現実となっていったのです。
ミナに迫る影
ミナ・ハーカー(旧姓ミナ・マリー)は、ついにジョナサンと再会を果たしていました。
彼は東欧の病院で療養していたのです。回復した2人は結婚し、ロンドンへ戻ってきていました。

しかし、ルーシーの死をきっかけに、ミナはヴァン・ヘルシングたちの調査に協力を申し出ます。
彼女は冷静かつ聡明で、仲間たちの記録(日記や書簡)を整理し、ドラキュラの行動を分析する役割を担います。
ところが――そのミナに、ドラキュラの影が忍び寄っていました。
ある夜、ジョナサンが眠るそばで、彼女はうなされながら夢を見ます。
その夢の中で、自分の首元に、氷のような唇が触れていたのです。
そう、ドラキュラがジョナサンを狙ったのは・・・2つの目的があったからです。
1. 新天地への進出(イギリス征服)
ドラキュラの真の目的は、「東欧からイギリスへ進出し、新たな地で支配勢力を築くこと」でした。
- ジョナサンを通じてロンドンの不動産を購入し、都市部に根を下ろそうとします。
- 墓地の土(祖国の土)を棺に入れて持ち込み、各地に潜伏拠点を作る準備をしていました。つまり、イギリスを次なる「吸血帝国の拠点」とする計画だったのです。
2. ミナを「伴侶」として迎えること
ジョナサン・ハーカーを追い詰めながらも殺さずに幽閉したのは、「手続き」と「ミナをおびき寄せる目的」がありました。ミナを自分のものにしたかったのです。
血の契約
ドラキュラの目的に気が付いたヴァン・ヘルシング。
彼らがミナのもとに駆けつけたとき、そこにいたのは、吸血鬼ドラキュラでした。

彼はミナの首に牙を突き立て、彼女の血を吸い、そして――自らの血を彼女に与えていたのです。
それは、「吸血鬼としての絆(血の契約)」を結ぶ儀式でした。
このままでは、ミナもまた、ルーシーのように吸血鬼になってしまう。
ドラキュラは闇に姿を消しましたが、ミナの体には刻まれたような傷跡と、不気味な変化が現れ始めます。
彼女は日中に眠気を覚え、夜になると奇妙な力を感じるようになります。
けれど、意識はしっかりしており、「最後まで人間として、皆とともに戦いたい」と懇願します。
怒りと覚悟――追跡の旅へ
ドラキュラは、再び棺を船に積み、トランシルヴァニアへ戻ろうとしていました。
ヴァン・ヘルシング一行はそれを察知し、ルーマニアへ向かうことを決意します。

- ジョナサン・ハーカー
- ミナ・ハーカー
- ヴァン・ヘルシング
- アーサー・ホルムウッド
- ジョン・セワード
- クインシー・モリス
この6人の旅路は、まさに「生者と死者の戦い」でした。
ミナの額には、ドラキュラとつながる不思議な印が現れます。
ヴァン・ヘルシングはそれを使って、彼の居場所を突き止め、聖なる武具を用意して備えます。
最後の決戦
雪が降り積もる山岳地帯。
吸血鬼の城は、再び姿を現しました。
その麓で、ドラキュラを乗せた馬車が近づいてくる――彼の棺は、その中にありました。
仲間たちは分かれて待ち伏せし、馬車が通る瞬間を狙います。
ついに――
クインシー・モリスとジョナサン・ハーカーが、棺を開けて斬りかかります。

日没寸前、最後の一瞬。
ジョナサンのナイフが、クインシーの剣が、ドラキュラの胸と喉を貫きました。
魂の解放
その瞬間、ドラキュラの身体は静かに崩れ落ち、まるで長い眠りにつくように朽ちていきました。
――その表情は、かすかに穏やかだったといいます。

ミナの額からは印が消え、彼女は救われました。
けれど、仲間の一人――クインシー・モリスは重傷を負い、仲間に見守られながら息を引き取ります。
「私は……満足だ。皆のために、そしてルーシーのために……」
――彼の最期の言葉でした。
終章
事件から7年後――

ジョナサンとミナは男の子を授かりました。
その子の名は「クインシー」。
亡き友の名を継ぎ、穏やかな世界の中で育てられます。
物語は、こうして静かに幕を下ろします。
まとめ
『ドラキュラ』の最終章は、吸血鬼との戦いという表面的なホラーを超え、
人間の勇気、愛、信仰、そして命をつなぐ物語として描かれています。

この時代に生きた彼らのように、
恐れを前にしても、正義と仲間の力を信じて歩む姿は、今も色褪せることはありません。
今回は細かな描写やエピソードを抜きました。物足りない方は、補完する意味もこめて、是非原作を読んでみてくださいね。