フランケンシュタイン第1章|命を創った科学者と禁断の実験の始まり
19世紀初頭、ある女性の夢が、のちに世界中の人々を魅了する物語を生み出しました。その女性とは、イギリスの作家メアリー・シェリー。
そしてその物語こそが、小説『フランケンシュタイン』です。
本作は「怪物の物語」として知られていますが、実際には「人間が生命を創造したことで始まる悲劇」として描かれています。
今回はその第1回として、主人公ヴィクター・フランケンシュタインがどのようにして“命を創った”のか、その始まりを追っていきます。
幼少期と科学への目覚め
ヴィクター・フランケンシュタインは、スイスの名家に生まれました。
幼少期から本を愛し、特に錬金術や自然哲学に興味を持っていました。

彼が夢中になったのは、パラケルススやアルベルトゥス・マグヌスといった、いわゆる“古代の魔術的学者”たち。
しかし、これらの知識は時代遅れであり、大学で本格的に自然科学を学ぶと、彼はそれらの限界に気づき始めます。
命の秘密を追い求めて
大学へ進学したヴィクターは、自然界の法則、とくに「生命とは何か」というテーマに取り憑かれていきました。

ある日、雷が木を一瞬で破壊する様子を見た彼は、電気の力が自然に強く関わっていることを確信します。
そして、彼は決意するのです。
「誰も成し遂げていないこと――すなわち、“死体に生命を与える”ことを、自分が実現するのだ」と。
禁断の実験と“あの瞬間”
それからというもの、ヴィクターは日夜研究に没頭し、人体の解剖や死体の収集にまで手を染めていきます。
倫理を捨て、使命のためにすべてを犠牲にした彼のもとに、ついにその瞬間は訪れました。

「夜が深まるころ、雷鳴が鳴り響く中で――私はついに“それ”のまぶたが開き、胸が上下に動くのを見たのです」
怪物は目を開け、息をしました。
それは命でした。人間の手で作られた命です。
しかし、喜びは長く続きません。
「美しいものを創った」と信じていたヴィクターの前に現れたのは、歪な姿をした“怪物”だったのです。
恐怖と逃避、そして病
ヴィクターは、その異形の存在を見て恐怖し、部屋から逃げ出します。
翌朝、怪物の姿は消えていましたが、その恐怖は彼の心に深く刻まれていました。

この体験は彼の心身に大きな負担を与え、ヴィクターはしばらくの間、病に倒れてしまいます。
友人クレルヴァルの助けで回復するも、怪物の存在がもたらす未来など、この時はまだ知る由もありませんでした。
次回予告
次回は、フランケンシュタインが捨てた「怪物」がどのように生き延び、何を見て、何を学んでいったのか――
「拒絶された怪物の孤独と復讐」をテーマにお届けします。