ペルシア神話①創世神話|アフラ・マズダーとアーリマンの光と闇の戦い
ペルシア神話は広範な伝承や叙事詩を含む超大作です。すべてを網羅しても分かりにくい部分がありますので、大まかに6つに分けてご紹介します。
今回はその①ペルシア神話の創世神話です。
※アフラ・マズダーとアーリマンは本来形がありません。ですが今回は視覚的にも分かりやすいようにデザインを充てています。宗教的な批判の意はまったくありませんので予めご了承ください。
創世神話:世界と善悪の誕生
はるか昔、この世界がまだ影も形もなかったころ、ただ静寂だけが宇宙を包んでいた。そこには、二つの存在がありました。

一方はアフラ・マズダー(Ahura Mazda)——光と秩序を司る至高の神であり、すべてを見通し、完全なる知恵を持つ存在。もう一方はアーリマン(Ahriman)——闇と混沌の化身であり、破壊と無知に取り憑かれた邪悪なる力。
アフラ・マズダーは広大な宇宙を見渡し、まだ何も存在しないその空間に、美しく調和の取れた世界を創ることを決意し、七日間をかけて天地を創造しました。
世界の創造
アフラ・マズダーは、宇宙の六つの要素を順番に創造しました。

第一の日、天空を創った。
完璧な球体が輝き、そこには純粋な光が満ちていた。この天空こそが、後に星々や太陽を宿す場所となる。
第二の日、水を創った。
透き通る湖が広がり、生命の源となるべき聖なる水が湧き出した。
第三の日、大地を創った。
堅牢な大地が形成され、草原や山々が生まれた。そこには風が吹き、まだ何の影も落ちていなかった。
第四の日、植物を創った。
大地は緑に覆われ、美しい花々が咲き誇った。果樹が実を結び、黄金色の麦が風に揺れた。
第五の日、動物を創った。
天には鳥が舞い、大地には獣が駆け、水には魚が泳いだ。それぞれが秩序に従い、調和をなしていた。
第六の日、最初の人間を創った。
その名はゲーヨーマルト。彼は光に包まれ、純粋な存在として生を受けた。
第七の日、アフラ・マズダーは世界を見渡し、それが美しく調和の取れたものであることを喜んだ。
こうして美しい世界が誕生しました。
アーリマンの襲撃
しかし、アーリマンはこの世界の誕生を知り、怒りに満ちて混沌の軍勢(デーウ、邪悪な精霊たち)を率い、宇宙に破壊をもたらそうとします。

「この世界が光に満ち、秩序が支配するというならば、我はそのすべてを覆し、暗黒をもたらす!」
アフラ・マズダーは、この戦いを見越して12,000年の時間枠を設定し、最初の3,000年間はアーリマンの侵入を阻止しました。しかし、やがてアーリマンは天空を突き破り、世界に災厄をもたらしました。
アーリマンはその恐るべき破壊力で、全能たるアフラ・マズダーの作った防御を突破してきたのです。
なぜ12,000年なのか?
ゾロアスター教では、時間(Zrvan, Zurvan)という概念が重要視され、世界は一定の周期で動くと考えられています。
12,000年という期間は、宇宙が始まり、善と悪が対立し、最終的に善が勝利して世界が浄化されるまでの神聖な時間のサイクルとして設定されました。これは、占星術的・神話的な象徴性を持つ数であり、古代の時間概念に基づくものと考えられています。
最初の人間と神聖な牛の犠牲
アーリマンの襲撃により、創造された生命は大きな試練に直面します。

ゲーヨーマルトもまた、アーリマンの攻撃を受けてしまいました。彼はその闇に抗いながらも、ついには命を落としてしまいます。しかし、彼の血から種子が生まれ、やがてそれが最初の人類マシュヤとマシュヤーネへと成長しました。
さらに、神聖な牛(エヴァグダート)もアーリマンの手によって殺されますが、その血から様々な動植物が生まれ、生命が世界に広がっていきました。
※これは、善と悪の戦いの中でも、生命が滅びることなく続いていくことを示しています。
一方、アフラ・マズダーは、アーリマンとの戦いが避けられないことを悟っていました。
世界に災厄が広がる中、アフラ・マズダーは確信していました。善なる力は決して滅びず、たとえ闇が広がっても、光が消えることはないことを。悪が栄えることはないということを。。。
こうして、世界は光と闇の対立の中に生まれたのでした。
人々は善を選ぶか、悪に堕ちるか、自らの意志で決めることを許されたのです。
そして、いつの日か、アフラ・マズダーの正しき光が世界を覆い、アーリマンの闇を完全に打ち払うその日まで、この戦いは続いていきます。そう、今この瞬間も。
まとめ
世界創世の神話をご紹介しました。ペルシア神話における創世の物語は、善と悪の戦いを根底に持ち、**「光と闇の対立」「生命の復活」「神の秩序」**といったテーマが描かれています。

- アフラ・マズダーは、宇宙を創造し、秩序を打ち立てた。
- アーリマンはそれを破壊しようとするが、生命は生き続ける。
- ゲーヨーマルトの死と、人類の誕生が、人類の試練と運命の始まりとなる。
この後の神話では、人類がどのように発展し、善と悪の戦いがどのように展開していくのかが語られていきます。
次回は、初期の英雄と王たちの物語を紹介します!